ハスラー CVTストレーナー交換 オイルパン洗浄のみコース

今回の題材のお車はスズキハスラー 平成26年式 MR31S 走行役11万㎞
「AT 多段式自動変速機」
「CVT 無段変速機」
が今の自動車の変速機の主流です。
これらの変速機は変速機として作動するために油圧を利用するので○○フルードと呼ばれる液体を使います。
この液体はおおまかにいうと
・油圧を伝える作動油という性能
・ギヤやらベアリングなどための潤滑油という性能
・内部の汚れを包み込んでしまう清浄剤という性能
などなどを兼ね備えた成分となっています。
その液体はほとんどの日本車メーカーは交換不要という扱いをしてきました。
いまでもトヨタ車を筆頭に整備要領書などに無交換となってたり、必要に応じて交換、など原則交換しなくて良いというスタンスです。
同じような感じで普通車のエンジンオイルはだいたい15000㎞ごとの交換、とかいてあります。
軽自動車ではその半分くらいかな。
しかしこの数字は環境問題とかメーカーとしての廃棄物を減らす観点であって、実際エンジンを作ってる設計者たちはそんな距離では機械が持たない、と思ってると聞きます。
昔からこの変速機のフルードは「無交換」という文字列を整備士たちは人それぞれ解釈していろんな考えをもっています。
ある人は
無交換と書いてあるんだからそれでいい
違う人は
エンジンオイルでもショベルカーの油圧オイルでもエンジン冷却水でも劣化しない液体は無いのだからどこかの段階で交換が必要
といいます。
自分でもエンジンオイルで15000㎞ごとはないやろう、とも思いますしブレーキフルードなども2年以上交換せずに乗るなんて、と思いますがそうじゃない整備士もいます。
なので自分的にはメーカーがいう自動変速機・無段変速機のフルードは無交換というのはメーカーの立場上のそういう目線で見た結果なのではという思いがあります。
設計者たちは替えて欲しいのでは??と。
昨今YouTubeなどでもフルード交換推奨という情報が飛び交ってます。
どれだけきれいに入れ換えるかを競ってるようにも見えます。
職人としてみるときれいに入れ換えるのは本望なので賛同します。
しかしきれいに入れ換える=コストも掛かるということでやたらめったら費用の負担を押しつけるのもなんだかなあ、と思ったりもします。
理想とする作業と現実の費用とのバランスを釣り合わせて提案するのも我々の仕事だと思ってますので、今回はバランス型のお仕事をしました。
というのも変速機の中も使ってると金属の摩耗粉やらクラッチ(自動変速機にもクラッチはあります)の摩耗粉がたまってきます。
やはりそれらは定期的に排出してあげた方が機械としてはいいと思います。
その排出するという事を前面に押し出して費用をできるだけ掛からないようにしました。
まずはフルードを抜き取り用のボルトを外してフルードを先もって抜いてCVT(無段変速機)の底を外します。
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これがその底板。
鉄粉などが貯まってます。
またその貯まった鉄粉が再度液体内に戻らないように磁石が設置されててゴミがひっついてます。
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変速機のなかも鉄粉などがついてるのでパーツクリーナーで軽く洗浄しておきます。
まんなかの四角い奴はメインのフィルターなので交換します。
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底板もパーツクリーナーで洗浄
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磁石もドロドロなのできれいにします。
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スズキのお車やらニッサンの一部車種などジヤトコ製の無段変速機はこの部分にももう一つフィルターがついてますので交換します。
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小さなフィルターですが真っ黒です。
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そしてコストを掛けるならこれらを終えた段階で全てのフルードを圧送交換しますが、ユーザーとの相談でこの部分のコストを抑えることにして「抜けた分だけの新油補充」にしました。
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フルードの全量入替にこだわらずとも日常生活用に使ってるお車であれば、維持費も大事な要素となってきますので妥協点として「不純物の排出」だけでも変速機のメンテンナンスとしては成り立ちます。
どこまで車の投資するかはユーザーさんの車に対する「愛」の大きさですからユーザーさんごとの希望と我々が「したい作業」のバランスが釣り合うところが最高の整備だとずっと思ってます。
このハスラーはずっとメンテをお任せいただいてます。
いろいろある方法を駆使して「まだまだ動いてもらわないと困る」、というユーザーさんの期待の応えて行きたいと思います。