ブレーキメンテナンスのひとつに「配管内のエア抜き」という作業があります。
一般の方はたぶん一度もすることでないでしょうし、またしてる場面を見ることもないでしょうけど、自動車整備のなかではとてもポピュラーな部類の作業で、基本的な知識の部類にも入ります。
新人整備士で車検作業を覚えるときにはたぶん先輩整備士とタッグを組んで教えてもらう作業の一番最初かも,という感じです。
たまたまYoutubeでWRCというカテゴリーのラリー中に大破した競技車を次のステージに走れるようにする緊急メンテの様子を捉えた動画を見ました。
整備士である自分にとってはラリー中の現場での応急手当とはどういうものなのかをマニア目線でじっくり見てました。
その中でブレーキキャリパーを含む足回りの交換のあと冒頭のエア抜き作業が映ってまして、世界レベルの競技車両でも「エア抜き」は自分たちがやってる作業を同じ事をやってるんだという場面でひとり感動!
ブレーキペダルを押し込む係とブレーキキャリパー側でブリーダーを緩める係。
2人が声を掛け合って作業を進める我々が普段やってる作業のまんまです。
というわけで30分ありますがそのうちのエア抜き場面からスタートです。
出来れば全画面のほうがよくわかります
興味がある方は最初から見てください(笑)
競技車両というのはいろんな工夫がされてて市販車とは一線を画したものなんですが、それゆえ「同じ作業をやってる」というところに変に感動してしまいました。
マニアな話でした。
年別アーカイブ: 2017年
そこに猫がいて飯を食った・・・
トヨタのアクア、車検でご入庫です。
エンジンルームに猫が侵入、というのは我々整備業界の者からすると
あたりまえ
のことなんですが、一般ユーザーの方はまだまだ認知されてないですし、「自分の車のエンジンルームに猫」ということも信じられないようで説明すると一様に皆さん、目が点、になられます。
どこから入るの?
やけどしないの?
そんなばかな
と言う反応が多いです。
日産自動車も「猫バンバン」というキャンペーンをしてます。
乗る前にボンネットをバンバン叩いて寝てる猫を起こしましょう、というキャンペーンです。
エンジンの始動とともにうろたえた猫が回転部分に巻き込まれるの防ぐためです。
猫の命も大事です。
それよりもオーナーさんの心の傷が深くならないように・・・という思いを込めてのキャンペーンです。
論より証拠
なにやらエンジンルームでお食事をしたようです。
どこかで拾ってきたパンをむしゃむしゃしてるうちにひとかけら狭いところに落としたようですね(笑)
時間による風化とエンジンルームの熱でカピカピになってましたよ。
走ってきてエンジン止めて、ほどよく冷めたエンジンの上は猫ちゃんにとって最高の寝床でありリビングルームです。
皆さんが思ってるほどエンジンルームは密閉された空間でなく、特に車の下部はスカスカな隙間だらけなのでいとも簡単に猫は浸入できてしまいます。
乗る前ちょっとした心がけでみんなハッピーですよ!
昭和65年は結果的にはなかったのですがその車検シールを見つけました。
世界遺産になる前から一度はドライブで行ってみたいと思っていた白川郷。
ふと思いつきで走ってきました。
片道約350キロ。
ワゴンRのガソリンタンクでは満タン限界の距離です(笑)
言うだけあって絵になる風景をたくさん見せてもらいました。
今やすっかり観光地となって村の中のメイン道路も歩行者天国状態で一般車は時間制限があって入れません。
その一角にご同業のお店がありました。
とはいうものの村の中は自動車は入れないのでお店を営業してるのかどうかわからない。
元の事務所らしき場所は休日だけなのかお土産屋さん状態(笑)
その店先にホンダの旧車
見た目はかなりくたびれてますが観光地としては戦後から昭和時代のレトロ感満載の雰囲気なのでこんなのものがあってもいいのかなと思いましたがその旧車をよくよく見てみると整備士として車そのものよりも別のものを大発見したような気持ち。
それはその車に貼ってあった車検のステッカー!
これのレア加減に気付きましたか?
うれしくて速攻写真を撮りました。
車の珍しさよりもこのステッカーの珍しさが数倍上回っています。
一世代前の軽自動車の車検シールは車検年度は数年分の記述のうち該当する年度以外は丸く切り取られて使っていました。
この写真のシールの有効期限は
昭和65年
これは珍しいでしょ。
車検の有効期限は2年ですからこの車は昭和63年に車検を受けてそのまま廃車になってシールだけが残っているんです。
昭和63年に車検を受けた軽自動車はみんな昭和65年までの有効期限を示したシールを貼っていたはずですがそれが残ってるのは超珍しい!!!
12ヶ月点検時期を示した通称「丸ステッカー」もついでに撮っておきました。
これも昭和64年を表してます。
と、風景の感動はさておき、整備士ならではのへんな感動を見つけた白川郷でした(笑)
タカタ製エアバッグのリコール未改修車両 車検で有効期間を更新しない処置
2018年5月以降、タカタ社製エアバッグ搭載車両でリコールの案内が届いてるにもかかわらず対策が行われていない車両は車検が通らなくなるそうです。
国土交通省は8月30日、タカタ製エアバッグのリコール改修促進のため、異常破裂する危険性が高い未改修車両の約170万台について、車検で有効期間を更新しない措置を講じると発表した。施行時期は2018年5月を予定している。
国交省によると2017年7月の時点で国内の改修率は78.1%で、約410万台の未改修車があるとしている。このうち異常破裂する危険性が高い未改修車の約170万台については、車検で有効期間を更新しない措置を講じる。
対象となるのは2017年4月以前にリコール届出されているもので、異常破裂する危険性が高い特定のインフレーターを使用したエアバッグを搭載した未改修車。
車検申請を受けた運輸支局等では、自動車登録検査業務電子情報処理システム等を活用して、措置対象未改修車両の場合は車検で有効期間を更新しない。該当する場合は、ディーラー等にて改修を行なった上で車検を受けることが必要となる。
なお、国交省では今回のリコール改修促進策について、電子政府の総合窓口(e-Gov)において8月30日~9月29日の1カ月間パブリックコメントを実施する。
引用元 http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1078217.html
いままででもリコールが出てるお車で、車検を受けると車検証更新時に
この車にはリコールの案内が出ていてまだ対策されていないので速やかにリコール作業を受けてください
という案内文書が一緒に発行されてましたが車検そのものは通ってました。
有効期間は取りあえず更新されてその後でも作業をすれば良かったのですが今回はその措置から一歩進んだような扱いですね。
それだけこのエアバッグ問題が深刻で、なおかつ現存車両が結構多い上に対策されていない車も多い、という扱いを受けてると言うことなんでしょう。
とはいうもの現実的な実情と照らし合わせると、整備業を営むものも検査場へ行ってからリコール未対策車と言うことがわかった、てなことで約束の納期が遅れたり、ディーラーもすぐに作業できるかどうかは人的なキャパに限界があるのでパンクしてしまうかもしれませんね。
そうするとますますお車を預かる日程が伸びるということになりいろんな面で困った場面が出てきそうな予感ですね。
日産モコ(スズキMRワゴン)の車検
日産モコ スズキのMRワゴンのOEM車です 平成20年式 走行約13万㎞
ご来店はネットでの検索でしたがいまやおなじみ様になっていただいたお車です。
当店を気に入っていただいてるようでほんとにありがたいです。
この度も車検整備をご用命いただきましたので整備内容の報告も兼ねてアップします。
日頃からお車の消耗品については見識があるお客様なので日常の整備はほぼ完璧。
整備工場ならではの点検と整備がご希望です。
前ブレーキ
ブレーキパッド残量2.5ミリ。
交換時期はビンゴでしたね
後ブレーキ
残量はまだOKでした
プラグは整備記録からも3万㎞走っていますので予防整備も兼ねて交換。
プラグの摩耗によるイグニッションコイルへの影響を考えるとこのあたりで交換がお勧め。
もしコイルまで壊れると痛い出費ですからね。
ブローバイガスというエンジン内で発生する未燃焼ガスを再度エンジン内に戻すためのバルブパッキンが寿命でオイルと混じったブローバイガスで汚れてました。
パッキン変えて汚れを清掃。
きれいなヘッドカバーは気持ちいい!
エンジンへの空気ダクトの取付クリップが風化して脱落。
ここのクリップがなくなるとエンジンの振動とともにこのダクトが音を出します。
その音が思いもかけず室内に響いて不快ですので当店ではほぼ車検ごとに交換します。
あとは金色と思ったホイルは清掃したら実はシルバーでしたという笑い話
岸和田からお越しのS様
今後ともよろしくお願いいたします。
夏期休暇のお知らせ
初代ワークス CA72V 15回目の車検
アルトワークス CA72V 昭和62年式
通称 「初代アルトワークス」 ですね。
何度のなくこのブログでも掲載してますがこのたび30歳になりました。
15回目の車検を終えたので記念撮影しておきました。
少しだけうんちく
軽自動車初のツインカムターボ車としてこの世に誕生。
550cc(当時の軽自動車の排気量)で64馬力。
バイクのようなエンジン回転数でタコメーターは9500回転からレッド。
まあとにかく走る走る。
ちなみに現在の軽自動車のターボ車の馬力が64馬力に横並びなのはこのワークスがたたき出した馬力が「これ以上はだめ」と当時の運輸省からの通達がいまでも生きてるから。
30年前の通達がまだ・・・
まあいまとなっては普通の軽のターボ車に全力で必死についていくという感じですが当時は画期的でした。
そんな走りをこのご老体に強いてあげるのもかわいそうなので最近は
「動態保存」
を心がけてますが、いまでも本気を出せば・・・なんとやら。
グレードもRS-Xというスポイラーいっぱいのグレードが一般的でしたが、これはRS-Sという改造ベースの飾りっ気のないグレード。
新車からのシートはスポンジがぼろぼろに朽ち果てて仕方なしにグレード外の中古で手に入れたピンクのシート。しかも4WDと書いてある。
本来はシルバー色の地味なシート・・・
少しだけ残念。
オリジナルの方が渋くていい。
生まれが昭和ですから車種別のオーディオ取付のためのオプション部品は結構売ってました。
これなんかもパイオニア謹製のこの車専用のオーディオボード。
オーディオの取付にこんな厚さ10ミリの合板を使うなんていまはマニアしかしません(笑)
当時はごくごく当たり前な話でした。
いろんな部品が製造中止で、どこかが壊れたときには四苦八苦しそうで恐ろしいですが動かせる間は動いてもらいましょう。
チラ裏の乱文失礼しました
臨時休業のお知らせ
次の土曜日、7月29日(土)は勝手ながらお休みさせて頂きます。
7月31日(月)から平常営業です。
ご不便をおかけしますがご容赦ください。
泉大津でカーエアコンガスリフレッシュ(規定量充填サービス)やってます
夏真っ盛り
この季節には必須アイテムのカーエアコン。
ここ最近はガスの重量管理も知れ渡ってきて「ガスの量を見てください」とか「自分でガス量を把握しておきたいんです」というお客様が増えてきました。
カーエアコンガスリフレッシュとかエアコンガスクリーニングとかいろいろサービスの名前はありますが、リフレッシュもクリーニングも的を外してます。
新しいガスもきれいなガスも二の次でほんとに必要なのは
ガスが規定量でしっかり働いてるか?
が大事なのです。
当店では最近 規定量充填サービス という名称で告知させてもらってます。
※ 2022/05/22 追記
ガスの規定量充填を純度の高いガスで行えるスナップオン社製カーエアコンサービスステーションDUALPROという整備機器を導入しました。
こちらのページへどうぞ
カーエアコン整備機器の名門 デンゲン製
そこが開発した
エコマックスジュニアⅡ
写真の通りこの機械が何をするかというと
++全自動でエアコンガスを回収して再生して充填する装置++
以前の記事でも少し書きましたが、エアコンガスは「重量管理」
つまりは重さでガス量を監視することになっています。
これが正しい整備です。
以前であれば
「ガス圧」
とか
「ガス管の中をのぞき窓から見て、泡の量で推測する」
(のぞき窓のことは一般的に「サイトグラス」と言いますね)
という方法でした。
しかしそれではあくまでも「だいたいこれぐらい」しか量れません。
「圧力と量」では単位が違います。
しかも最近の車はその決まった量で最大限エアコンが働くように設計されているので、ガスの量が多くても少なくてもエアコンの能力は下がってしまうのです。
整備する側もその許される誤差内にガス量を調整してこそプロの仕事。
なのでただでさえ夏の気温が高い大阪で整備業をやってるのですから、少しでも快適な夏を迎えてもらえるようにきっちりとしたエアコンガス量の管理をしていきたいと思って導入しました。
エコマックスジュニアⅡをお車につなぎます。
夏場はエアコンの冷えにパンチがない、との自己申告がありました。
吹き出し口の温度測定。
同時にエアコンガスサイクルの圧力でおおよそのエアコンの状態を推測します。
状況を把握するには相変わらず圧力は値としては必要ですよ。
では作業スタート
一旦エアコンシステムの配管内の既存のガスを全て回収します。
最初は内部の圧力で自然に機械の中に入ってきますが、最後はそのまま配管内が真空状態になるまで徹底して引き抜きます。
このとき規定量を回収できるのが普通なのですが、そこまで回収できないということは、いままでの使用過程でガスが少しずつ洩れてたということになります。
真空引きにはもう一つ意味があって、配管内の水分も真空状態で「蒸発」して一緒に出てきますので配管内の水分を除去できます。
真空にするのはエアコン整備では基本中の基本です。
真空引きが終わると回収したガスの不純物をクリーナーで除去しながら車両に戻していきます。
このとき規定量より回収できたガス量が少ない場合、自動的に新しいガス缶より補充して規定量を充填します。
ここが素晴らしい仕組みだと思います。
エアコンが冷えない原因は多義に渡りますのでガスの量も診断の中の一部です。
しかしまずは土台になるのは「ガスがきっちり規定の重量で入ってるか」からスタートです。
それでなおかつ冷えないのなら診断ステップが次へと進んでいくものです。
今シーズンの作業例の一部です
ツイカジュウテンガス と言う項目に注目です。
エクシーガのエアコンガス
ミゼットⅡのエアコンガス規定量充填サービス
アクセラのエアコンガス
イプサムのガス量
EKワゴン平成14年式のガス充填
グランビアはデュアルエアコンなので規定量多いですね
ワゴンRはマイカーを作業して気に入っていただいて社用車でリピートされました。
平成16年式デミオ ほぼエアコンは効いてませんでした。
最後のデミオのお客さんは昼間はほとんど効いた感じがしないという事でご入庫。
登録13年間一度もエアコンメンテはしたことがないということで残りは規定量の30パーセントでした。
これでは効かないですね。
規定量もオプションのコンプレッサーオイルの缶に含まれるガス量を引いたり、規定量の許容があったりするのでいろいろ設定はケースバイケース。
このあたりの判断も必要です。
※ 2022/05/22 追記
ガスの規定量充填を純度の高いガスで行えるスナップオン社製カーエアコンサービスステーションDUALPROという整備機器を導入しました。
こちらのページへどうぞ
作業員は自分一人ですので予約制になってしまいます。
突然のご来店では対応できないかもしれませんので事前にお問い合わせ・日程相談をお願いします。
回転部分の突出禁止規定及び排気管の開口方向規定の改正について
車検のルールは時々見直されて時代に沿って少しずつ改定されていきますが、久々に大きな改定がありました。
回転部分の突出禁止規定及び排気管の開口方向規定の改正について
というお知らせです。
自動車のタイヤ&ホイルはその定義で言うと「回転部分」と言います。
その回転部分は車体からはみ出してはいけない、という根本的なルールが保安基準創設時からありまして、暴走族の車など、このルールを破ることが社会への反抗の象徴みたいな扱いでした。
ま、いまでもそんな車は時々見かけますが(笑)
車検に入庫してきた車が車体からはみ出してたときに自動車修理工場には戦慄が走ると言っても過言でないです。
タイヤがはみ出してるのでこのままでは車検通りません
とかいうやり取りが全国津々浦々で行われてきたんです。
その基本中の基本の「タイヤのはみ出し」が細かい規定はありますがざっくり言うと10ミリまで許しましょう,と言うルール改定がありました。
これは整備業界ではなかなかのビッグニュース。
一般には「へ~」という程度のことですがたぶん今日は日本国中の自動車整備業に携わる人達の中ではビッグニュースでしょう。
あと以外に知られてない「排気管の開口方向」
歩行者に排気ガスが掛からないようにとかいろんな理由で
排気管は進行方向に対して左右に開口してはならない。
仮に左右向きに出したとしても進行方向に対して30度まで。
と言うルールもありました。
これも今回制限がなくなりました。
全く根拠はないですが、自分なりの経験で考えると自動車の車検のルールが変わるときはおおよそ「外交的な配慮」、悪く言うと「外圧に屈して」ルール変更が行われてきましたので、今回も外車にそういう車が増えた、というのが一因では?と思います。
外国はマフラーの向きが反対なので日本で売るためにはそれ用の仕様に変更して日本で売らないといけないんです。
そこにはコストが掛かるため外車メーカーは価格的に不利になりますからね。
以前は二人乗りOKだった高速道路は2輪バイクが死亡事故が続いたため「高速道路での二人乗り禁止」という道交法の改定があり不便になりました。
外国のバイクメーカーから「そんな法規があるから我が国の大型バイクが売れない」という横やりが入り、現在は二人乗り禁止はなくなりました。
国内のルールが世界からみると稀なルール、と言うことは多々あるようです。
その独自ルールも国境を越えて混じるときにはすりあわせが必要なんでしょうね。
いいか悪いかは別問題ですが・・・