2024年3月 整備のまとめ レジェンドハイブリッド車検など

おかげさんで2月の半ばから3月まで入庫が続いてまして一つ一つの事案で記事をアップすれば良いものを気づくと3月10日に近いという・・・
なので気づいた事案などをまとめてみました。

ダイハツムーヴ LA100S  走行38000㎞
信号待ち中にエンジンのどこかの気筒が失火してエンジンが触れ出した、ダイハツはイグニッションコイルが弱いから壊れたかも、とご入庫。

症状の説明が具体的なのはうちの元の従業員さんだから。
現在は引退されて日々の生活を楽しんで居られます。
整備士が症状説明してくれるのだから当たり前ですがわかりやすい。
イグニッションコイルアナライザーでいろいろ比較。
結論から言うと「デンソー製のプラグが原因」でしょうね。
コイルの出力やその他プラグ本体の焼け状態見ても違和感はない。
けれど見当付けてNGK社製のRXプラグに交換したら加速が入庫時と全然違うなめらかさ。
ダイハツ+デンソープラグの組み合わせ不具合を久しぶりに体験。

日産モコ(スズキのMRワゴン)車検でご入庫。
走行距離が少ないお車ですが青空駐車の影響もあってブレーキローターに錆が侵入。
パッドとローターの接触面積が減ってるとどうしても自分の物さしではNG。
許せないのでここらで一度手入れしておきますとご提案。

ローターをきれいに。

そして変な減り方になってたパッドもきれいに。

ホンダレジェンドハイブリッド KC2。
お客さんはなじみのお客さんですがこのお車の入庫は初めて。
正直見たことも乗ったこともなかったので構造を一から事前に予習。
勉強すればするほど、「よくぞこれほど駆動力を制御をしてる車を世に送り出したもんだ」と。
前側のタイヤをエンジン+モーター1個、後ろのタイヤを2個のモーターで駆動。
すごいことしてるな~、と思う半面この車を整備するのかとドキドキ(笑)

仕組みはすごいとは言え消耗品は基本的なものであることに間違いは無いのでその辺りは粛々とメンテナンスさせていただきました。
トヨタ系のディーラー中古車で2年前に車検を受けて購入されたようなのですが・・・
記録上ブレーキフルード交換となっていますがこれって2年前に交換したブレーキフルードですか???

途中まで減らしてみたけれどタンクの底が見えません。
う~ん・・・・ほんまに交換した??

減らした上で新しいフルードをちょっと足してみたらかろうじて底が見える程度。

なんだかな~と悶々としながらブレーキフルードの交換。
さすがにハイブリッド車なので普通の交換手順ではなかった。
トヨタ系のハイブリッド車みたいに診断機を繋いで・・ではなく、

レジェンドハイブリッドのブレーキフルードの交換方法は

  1. アシスタントを乗せてペダルを踏んでもらう
    キーをオンにして4輪交換
    右前⇒左前⇒左後⇒右後 つまりは反時計回りに4輪。
  2. そしてキーをオフにして3分以上待って4輪交換
    これまた反時計回りに右前⇒左前⇒左後⇒右後と一周

※交換途中は乗ったままでドアを開けてはいけない

と通常の倍の手間と人員を使っての作業が必要と整備要領書を読み込んで作業。
予習のおかげ(得意満面)でなんとかクリア。

ブレーキフルード交換が終わってエンジンオイル+オイルフィルターの交換、とコマを進めるとここでも新たなトラップ。
オイルフィルターを強く締めすぎていて既存の工具では歯が立たない。
トヨタ整備士はまたやっちまったな(笑)

しばし方法を考えて工場の中をうろうろ。
そしたら古い工具のエリアに昭和時代のフィルター外しの工具が。
錆が回ってますが、「先代の父上ありがとう」、といそいそ使わせていただきました。
おかげで堅いフィルターに打ち勝つことができました。

新しいフィルターは決められた締付トルクで取付。
どこかの誰かが困らないように。

戦いの跡

レジェンドのオーナーさんが「ブレーキの効きのムラがあるように思う」とおっしゃるのでブレーキローターの振れを測定しようとダイヤルゲージを持ち出して測定。
あらためて文字盤を見るとなんとCITIZEN製。
JISマークも入ってますから正規品です。

あの時計のCITIZEN。
時計の技術を応用して精密機械を作っていたんですね。

実はこっそりとYoutubeチャンネルを持ってるのでよかったらチャンネル登録してください。
ほんとに時々ですが動画をアップしています。

そしてなんとレジェンドはホイルを取り付けてるナットの頭は22㎜。
(通常このサイズの国産車は21mm)
こんなサイズのナットを見たのは初めて。
こんなところがホンダらしいけど整備する側からするとちょっと焦る。

ちなみに締付トルクは127Nm。
この値も初めてでした。

あとはハイブリッド車の電動コンプレッサー対応のカーエアコンサービスステーションデュアルでガスを規定量にきっちりと。
POEタイプのコンプレッサーオイル対応のマシンでないと故障の原因に。

さて、次は・・・
時々水温が上がり気味のワゴンR MC22S 平成15年式の16万㎞。
たぶん今まで一度もサーモスタットは変えてなさそうなので交換。
取り付ける前に新品と比較。
同じ温度で開くスピードと開く量が明らかに違ったのでこれは経年劣化でしょう。
左が新品で真鍮の部分の移動量が違うのがわかります。
移動量=弁の開度ですからこれでよくエンジンは冷えるようになるはず。

サーモスタットと同時にラジエーターキャップやら気になる配管あたりを同時交換。
手間は一緒なのでこういうときにちょっと範囲を広げて部品交換しておけばお得ですね。

まあこんな感じで3月はこれから後半戦。
落ち着く日はなさそうな予感・・・・

 

ダイハツ ミライース LA350S ベルト交換

ダイハツ ミライース LA350S 平成30年式 走行約11万㎞
車検で入庫しました。

ウォーターポンプの交換が必要でしたのでその過程でのベルト交換の部分。
ダイハツのこのあたりの車はミラにかかわらずほぼ一緒なのでは?と思います。

オルタネーターの上と下のボルトを緩めます。

オルタネーターとウォーターポンプを駆動するベルトは調整式。
エアコンベルトは調整機構無しのストレッチタイプ。
オルタのベルトは調整機構を緩めて外して、ストレッチベルトは切断するか、外す工具を使って物理的に外します。

外すのは汎用工具でスパッと外れるので楽ちんです。

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ベルトを取り付けていくときのの張りは、たわみ量が〇ミリという時代はほぼ終わっててスズキ車もダイハツ車も取付は張力計を使うという整備マニュアルになってますね。
ま、この方が「これくらいか~?」という曖昧さをなくして確実になおかつ早く仕事が出来ます。

 

張力計に打ち込む値もきっちり整備マニュアルに記載されています。

 

張力計を使ってオルタネーターの張りを見ながら取り付けます。
決められた値を張力計に入力

 

ベルトをギターの弦のようにはじいて張力計のマイクに聞かせると・・・
張りの強さが値となって表示されますので規定値に合わせてボルトを締める。

オルタネーターの上と下のボルトは50Nmくらいの締め付けトルクです。
こういう部分もトルクレンチ使った方が結果的に自分が安心できるので一手間余分ですけど使います。

 

エアコンコンプレッサーベルトを取り付けるときは汎用では無く専用工具を使った方がベルト痛まなくていいです。

 

ちなみにこのSST(特殊工具)はダイハツ純正のもの
値段は忘れましたがそんなに高くなかったのでオススメです
部品番号はこれ
取り付け工具付きのベルトも販売されてますけど・・・

今回はこれ以外にウォーターポンプの交換がありましたがそのあたりは割愛。
ポンプ替えるにしてもオルタネーター交換にも必ずベルトの脱着は必要となる作業ですね。

ポンプとかいろいろメンテナンスを受けたミライースは通勤の足になるべくオーナーさんのもとへ帰っていきました。
いつまでも調子よくオーナーさんの役に立ってほしいものです。

 

ガスの不足は圧力メーターではわかりません ダイハツミラ エアコンが冷えない

前回の記事「ガスの量は圧力計ではわかりません」を書いたあとにエアコンが冷えないミラが入庫してきました。
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何となく冷えてるけどとてもじゃないけど乗ってられない、というお話しです。
問診を終えてセオリーに則って診断してみましたが大きな問題や漏れは見えなかったのでスナップオン社製DUALPROを接続してみます。
接続後
おおよそのガスの流れ
を見るための圧力計として使うためです。
ss-DSC_3715-thumbnail2.jpg
エンジンを掛けてエアコンをオンにして読み取れるのは確かにガスが少ないと言うこと。
ただしこの段階ではどれくらい少ないかはさっぱりわかりません。
その判断は高圧側(右側)の値で読み取っています。
でも低圧側(左側)はいたって「普通」です。
簡易エアコンガスチャージホースのメーターはここを読み取ります。
風の吹き出し部分の温度は16.4℃。
外気温30℃でしたから冷えてないことはないというお客さんの訴えは正しいですけど、これではいつものように冷えてるとは思わないでしょう。
ss-DSC_3716-thumbnail2.jpg
ガスが少ないのは間違いなかったので規定量をチャージしました。
ss-DSC_3719-thumbnail2.jpg
規定量320gに対して入っていたガスの量は95g
本来の量に対して30%しか残ってなかったということになります。
これでは冷えないはずですね。
作業後の吹き出し口温度は8.8℃
アイドリングでこの温度でちょっとエンジン回転を上げれば温度センサー限度の7℃くらいまで余裕で冷えるようになりました。
ss-DSC_3718-thumbnail2.jpg
大事なのはきっちりとガスが規定量入ったときの圧力メーターの値。
ss-DSC_3717-thumbnail2.jpg
冷えるために大事な低圧側(左側)の値はどうでしょうか?
ガスの量が30%の時は0.23
規定量での圧力は0.19
ガスの量にしたらおおよそ3倍になってるはずですが・・・
この状態がエアコンが設計通りの働きなんです。
圧力だけでは何もわからないことがおわかりいただけると思います。
ガスがきっちり入ってる状態で低圧側の圧力が0.3を越えてくると別の原因でエアコンの冷えが悪くなってくると思います。
圧力計ではガスが入ってなくても入っていてもガスの量は曖昧な判断しかできないのです。
何度も言いますがメーターを頼りにチャージして結果的にガスの入れすぎになるのはエアコンを壊します。
暑い夏を快適に乗り越えるためにもエアコンは確かな整備工場でちゃんとメンテしてもらいましょうね。

ダイハツ ハイゼットのエアコンフィルター交換

ダイハツのハイゼットカーゴ S321V 平成26年式

エアコンフィルターの交換(今回は新設取付)
我々整備士は遙か昔、エアコンフィルターがこの世に存在しなかったときから車のエアコンとつきあってきてます。
過去のエアコン修理で「風量が足りない」という修理はエアコンを全部分解してエバポレーターと呼ばれる部分を単体にして水洗い。
が定番の修理でもちろん相当な作業量となり費用も工賃としてお客さんに降りかかるという悲しい現実でした。

そういう声を反映してか徐々にエアコンフィルターという商品がいろいろな車に設定され始め、いまでは軽自動車に至るまでほぼ標準装備品となり、定期的の交換することでエアコン内部までほこりなどが入らないようになりました。
そしてエアコンフィルターを定期的に交換することで、エアコン内部が汚れず、詰まることもなく、ちゃんと保守できるようになったのです。
このあたりのハイゼット(トラックもバンも)最初の設計では濾紙式のエアコンフィルターが設定されてなくて取り付けようとしても部品そのものがない、という状態でした。

しかしながらダイハツも世論を受けて開発したのか数年前から専用のエアコンフィルターが部品として設定されたんです。
ハイゼットはエアコンフィルターが付かない、というのが当たり前でしたから発売されたと聞いたときはよかったよかったという感じでした。
お客さんも快適になるしエアコン内部が汚れるのを軽減できて費用も助かるからです。

今回車検で入庫してきたハイゼットは過去の整備歴を見ても多分エアコンフィルターは取り付けられていないと思ったので部品発注。
分解してみたら案の定設置されていなかったので今回取り付けました。
ただ設計上設定されていないエアコンフィルターなのでかんたんには設置できずそれなりの手順が必要です。

グローボックスを外してまずはコントロールユニットのボルト3本外す
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コントロールユニットの配線を逃がしてファンモーターをビス3本緩めて外す
ss-DSC_1490.jpg

外すと内部はこんな感じ
内部の内気循環用のプラスチックの網についたほこりはエアブロー
ss-DSC_1491.jpg

そしてこれが新しく設定されたフィルター
ss-DSC_1492.jpg
ss-DSC_1493.jpg

これを所定に位置にセット
ss-DSC_1494.jpg

あとは来た道を戻って元通りにして作業完了
ss-DSC_1495.jpg
ss-DSC_1496.jpg

コントロールユニットに配線を逃がすのに配線止め2箇所の取り外しとファンモーターのビスを外すのに短いマイナスドライバーが必要です。
そのあたりがちょっと工具と技量が必要かも。

というわけで次の車検まではこのフィルターにがんばってもらって車検ごとに交換していくと快適な車内空間が得られるでしょう。
そして取り付けられてないお車にお乗りの方は今すぐにでも取り付けましょう。
エアコン内部の汚れがたまらないうちに・・・

2023/01/06追記
ハイゼットカーゴのS3##系でも2017年(平成29年)11月以降のハイゼットカーゴはエアコンフィルターは以下の形に変わります。
いわゆる普通のエアコンフィルターになりますね。

 

またハイゼットカーゴは2021年12月にフルモデルチェンジしてS700Vという型式になり、エアコンフィルターは変わってそうです。