ワゴンR 冷却ファンが原因のエアコン冷え不良

ワゴンR MH34S 平成26年 走行12万㎞

エアコンがほとんど冷えないという事でご入庫です。

冷えない原因はガス不足、と疑いがちですがまずは基本から。

エアコン周りの電源がちゃんと来てるか?
エアコンパネルから指示は行ってそうか?
配管がオイルまみれになってないか?

などなど

エアコンコンプレッサーは回ってるかを見ると回ってる。
エアコン配管を触ってみると温かいとこは温かいし冷たいところは冷たい。
配管を触ってるときに

あれ冷却ファンの音がしない

と。

診断してるときは見るのと同時にいろんな感覚で感じとることができる冷静さが大事かも。

 

診断機を繋ぎ強制的にファンを駆動して見るも回らない。
ハンマーの持ち手をつかってファンをちょっと押してみたらゆるゆると回り出したので原因はここか、と判断。
で、その診断を裏付けるために診断機の冷却水温値を見てみたら普段は85℃~95℃くらいなのに115℃だったのでほぼ確信を得ました。
またこの頃のワゴンRやスペーシアなどに冷却ファンの保証延長が出てたことも頭の片隅にありましたので余計に間違いないと。
ちなみの保証延長は登録から7年走行10万㎞までだったので適合しませんでした。

 

原因がわかったら冷却ファンの交換に着手。
まずはエンジンアンダーカバーやバンパーなど分解。

エンジン側も邪魔になりそうなエアクリーナーケースなど分解

分解が終わったらエアコンガスを回収。
この形式より前のスズキ車はラジエーターを車体下側に引き抜くよう外せたのでエアコン周りの配管はいじることなかったんですが、このワゴンRあたりから(R06Aエンジンあたり)ラジエーターはエアコンコンデンサーを外して前に引き出して外すようになってるのでガス回収は必須です。

ガス回収が終わったらコンデンサーの配管を外していきます。

そしてコンデンサーをまず取外し

そうしたらラジエーターが丸見えになるのでホース周りを外してラジエーターごとファンをはずします。

普通ならここで折り返し地点で新しいファンを付けて・・・となりますが、冷却ファンが回らないまま走っていたのでオーバーヒートさせてる可能性があります。
問診では赤い冷却水温警告灯は光ってなかったとのことでしたが、走行距離や年式を加味してサーモスタット、ラジエーター本体、も予防整備で交換をおすすめして、快諾を得たので作業を進めます。

サーモスタットを交換。
知恵の輪ですね。

そして新しいラジエーターと冷却ファン。
モーターだけ注文しようとしたらシュラウドと呼ばれる導風カバーなども一緒になってるようでひとかたまりで来ました。
保証延長の関係かな??

エアコンの冷えを決定づけるスポンジです。
このあたりを分解したのならば絶対交換すべきですね。
スポンジが風化して隙間の空いた状態での復元はアウトです。

ホース類も劣化してるので同時交換。

コンデンサーを付ける直前のラジエーターです。
銀色がまぶしい(笑)

手の届くところにスロットルバルブが見えたのでおまけでバルブ内部を清掃しときました。
かなりカーボンが溜まってたので走りが変わるはず。

全ての組立が終わったら冷却水を注入して圧力を掛けて水漏れ検査

エアコンガスを規定量注入して試運転

この日の外気温は34.1℃

エンジンや他の箇所にエラーコードが記憶されていないか確認。

試運転帰ってきてエアコンの吹き出し口温度を計測。
アイドリング状態でこれだけ冷えれば合格ですね。

新規のお客さんでうちではこのワゴンRを見るのは初めてだったのですが、ちょうどスズキの愛車無料点検期間中だったので車全般をいろいろ点検。
発電機をまわすベルトに亀裂が見つかったのでご報告。
後日再入庫頂くということです。

分解前に回収出来たガスは170g。
この時点で冷えが悪い状態だったのは間違いないですね。
そして不足分150g足して規定量320gを充填(じゅうてん)

そして交換したファンがどんな廻り方をしてたかショート動画にしておきましたのでご参考に。
電源につないだだけではまわらず、ちょっと指で補助してあげたらそれなりに回るという感じ。
とはいえもっと全速力で回らないといけないはずなのでやっぱり「お疲れ様でした」という状態ですね。

これでこの夏もしっかり冷えた車内でワゴンRに乗ることができるでしょう。
2年乗れたら良いとおっしゃってましたが調子よくなれば愛着がわいて「もう2年」となるのは自動車修理屋さんあるあるです・・・・

モコ MRワゴン ラジエーターファンモーターの寿命で交換

令和5年5月8日(月)よりお店は営業再開しております。
大型連休はしっかり安静にしてました。
出かける気は毛頭無かったので安静に絶対がついて「自主的絶対安静」の状態で暮らしてました。

時々渋滞情報をみて、赤い線が着いてる高速道路を走ってる方々は「大変やろなあ」と思ってました。

さて日産のモコ、スズキのMRワゴンOEM車です。
まあよくはたらいてる車で2008年式で18万㎞走ってます。
いろんな消耗品は一通り交換の憂き目に遭ってますが今回は

「水温警告灯がちらっと光った」というご一報です。
冷却水がなくなってたら大変なのでレッカーサービスをお願いしてご入庫です。

ご入庫後は冷却水量点検 ⇒ 水はある。
では次は冷却ファン回ってる?? ⇒ 回ってない
この時点でだいたいの故障ストーリーが頭の中を巡ります。

ファン用のモーターまで電気来てる?? ⇒ 来てる。

電気来た状態でモーター殴る(笑) ⇒ ちょっと回る(爆)

ということでファンモーター内部の消耗で寿命が来た、との判断で作業開始。

 

ファン単体では車から外せない構造で、ラジエーターごとの取り外しです。
そのためにいろいろ附属品も分解。

 

外すための作業をしながらエンジンに目が行くと「オイル漏れ」と目があってしまいました。
このまま放置すると以前に交換したサーモスタットケースのパッキンにオイルが回ってしまいパッキンが劣化、結果その部分から冷却水漏れというストーりができあがってしまうのでユーザーさんにその旨報告して追加作業の許可をいただきました。

18万㎞走ったエンジンとは思えないほどのきれいなカムシャフトまわり。
幾度となく定期的にオイル交換してもらってる証拠です。
ユーザーさんの日頃の愛情いっぱいオイルメンテナンスでしか得られない結果です。

素晴らしいメンテナンスとはいえ車のゴム製品は経年劣化します。
ただこの距離と年数まで漏れなかったのはやはり定期的なオイル交換のなせる技ですね。
外す途中でパキパキ「割れる」
もうゴムでは無くただの堅いプラスチックになっています。
これでは金属と金属の間を自身の柔軟性でせき止めてるパッキンの働きは無くなり液体の漏れを止める性能は残っていませんね。

 

オイル汚れが固着してないのでちょっとウエスで拭くだけで素材の色に戻ります。
素晴らしい!

新しい「しなやかなゴム」に交換してカバーを復元。
理屈では同じ年数・距離だけこのパッキンはもつはず・・・

カバーを復元途中にエンジンのアイドリング回転を調整するバルブにアクセスしやすかったので、外して点検。
スズキを含めこの形の調整バルブは煤が堆積して通路が狭くなってエンジンの回転数を調整しきれなくなることがあるので時々お掃除は必須です。
点検してみると18万㎞分溜まってました。

ちょっととがった工具で煤をつつくとご覧の通り。
この厚みの分、煤が蓄積してるわけです。

溶剤などを使ってきれいさっぱり。
これが本来の姿です。

いろんな回り道を経て本来の故障箇所、ファンモーターの交換。
これでオーバーヒートは大丈夫。
このファンはエアコンのガスも冷却してるのでこれが調子悪くなると、エンジンを冷やしきれないだけで無く、エアコンも冷えなくなると言う大事な部品なんですよね。

全ての作業が終わって、冷却水のエア抜きやらエアコンガス圧力など後処理をしてモコは待ちわびるユーザーさんの元へ帰っていきました。
まだまだ元気に走ってくれることでしょう。

 

 

さてあとは家訓に基づき捨てる前には部品を分解。
なぜモーターが回らなくなったか?という構造分析タイム。

このスプリングで「ブラシ」と言われる炭素素材でできた部品が電線の先にあるはずなのですが摩耗しきってしまってスプリングが飛び出てしまってます。

「ブラシ」がすべて「粉」になって堆積してますね。

よく見るとわずかに残骸が残ってました。
ほんらいは1㎝ほど長さのあり、写真の茶色のケースに収まってる部品なんですよ。
軸が回転することで押しつけられたブラシは少しずつ摩耗していき最後はこういう形で寿命を迎えモーターは終わります。

実はこのブラシを交換したら復活するので部品さえあれば実は修理できるんです。
部品設定されてたり、他のモーターのブラシを流用したりして復活させてる場合も見受けられます。

修理して使えば流行りのSDGs(えすでぃーじーず)って言う一部の人が大好きなあれですね。
いろんなキャンペーンをして、使えるものは修理して使うことで再生できるものは再生して使う、とか。

自動車も修理できるのならその部位だけ手当てして復活させるといいと思うんです。が、再生するコストを考えたらユーザーが嫌がって捨てる選択をする、となるのが現実ですよね。
このモーターでも分解することなんか想定してなくてプレスで蓋が開かない構造になってるのを力技で無理矢理開けてこそ中身とご対面できるわけです。

最初からモーターごときを修理して使うなんて言うことは考えてなくて壊れたら交換、もしくは壊れたら新車買ってねと言うことですね。
自動車が耐久消費財なのである程度は理解できるんですが何かもったいない気が。

その上、国の施策として古い車には税の重加算をして、新しい車はいろんな特典をつけて減税して乗換に誘導してたり・・・・
ドイツなんかは古い車を維持してたら「ゴミを出さない」という環境維持のご褒美として「減税」ですからね~

えすでぃーじーずで循環可能な社会を、といいつつ、乗り換えざるを得ない方向に民間を導く・・・
なんとも矛盾だらけの現実ですよね~

現場からは以上です。