アルト ブレーキの効きが悪い

スズキ アルト HA24S 平成18年式 走行約17000キロ

整備内容の説明のためにブログにしました。

年式の割に距離が浅いお車です。
「ブレーキの効きが悪い」という一報でご入庫です。

どんな風に効かないんでしょうか?

ブレーキを踏んでも車が走ろうとする感じ

こんなやり取りでその時はブレーキパッドが消耗してしまってブレーキローターを削りまくってるのか?とかブレーキのどこかが固着してるのかと入庫まで悶々と想像します。
うちの管理車両ならブレーキが固着するなんて言うことは無いように普段から手入れしてますがお得意さんの併有車なのでこのお車の入庫は初めてになります。

ということで入庫してから確認すると年式にしては距離が浅い。
と言うことは裏返すと止まってる時間が長いと言うことですね。
お預かりしてすぐにブレーキローターを見ました。
かなり錆びてえくぼだらけ。
この時点でまずこれかなと思いましたがまずは試運転。

ブレーキを踏んでみるとたしかに他の同型式のアルトと比べても効きが悪いのはわかりましたのでとりあえずリフトアップ。
裏側からブレーキローターを見たら
「ああこれか」という状態。

光ってる部分が実際ブレーキ力を発揮する部分です。
ほんとはローターの全幅が光ってないといけないんですが距離の浅いお車はどうしても錆が回ってしまいます。
ちょこちょこ動いてると錆びても何回かのブレーキで錆は落ちるんですが錆の方が強くなってしまうとこうなります。

雰囲気はわかったのでとりあえず4輪ともブレーキを分解して点検開始。

後はオーソドックスな感じですが、ブレーキシューの表面をサンドペーパーできれいにして最後はブレーキの隙間を目一杯詰めて調整します。
これだけでも効きが変わります。

ブレーキ調整が終わったらセンターナットを規定トルクで締め付け。

ナットを締めたらカバーを付けますが前回の整備の時にちゃんとした工具を使わずに取り外したため凸凹にしてしまっててこのままでは水が入ってベアリングが錆びてしまうので新しくします。

取り付けるときも真ん中をハンマーで叩くとこれまた凸凹になるので「縁」を叩けるよう工夫が必要。

これでよし!

外側の錆もできるだけ落してあとはお化粧しておきます。
性能には関係ないですがちょっとしたこだわり。

次は本命の前のブレーキを分解点検
表からの錆よりも裏側の錆がひどくてブレーキパッドとローターが半分くらいしか接触してないんですね。
これでは「効かない」と感じるはずです。

錆のおかげでいびつになってしまったローターを研磨(研削)して修正します。
まずはブレーキローターを取り外します。

取り外したら研磨機に接する部分の錆取り。

そして旋盤で材料を削るのと同じで均一に面を出していきます。

出来上がり

あとはローターを組み付けるだけ・・・ではなく自分なりの基準で組み立てていきます。
ローターの取付部分の錆取り

ピストンを押し出して錆びてないか、汚れてないか、固着してないかを確認。
この場合も汚れをできるだけきれいにしてからゴムとピストンの間に注油しておきます。

ブレーキパッドを支えるホルダー。
この部分にグリスを塗る整備士さんが多いですが自分は塗らない派。
ご覧の通り摩耗粉とグリスが混ざり合って泥団子になり悪影響しかないと思うからです。

グリスをきれいに落してその上で磨き上げておきます。

スライドピンへの注油も必ず。

今回ブレーキパッドは残量もたくさん残ってましたが、錆のおかげで変な減り方になっていたのと、距離を考えたらきっと新車から一度も交換されていなくて硬化してると思ったので新品をチョイス。
スズキの純正を使うと音止めのシムも新品で付いてくるので何かとお得。
リフレッシュには最適です。
シムとパッドにもグリス塗る人居ますが自分はここでも塗りません。
理由はグリスが異音止め効果がほぼ無いのとやはりここでも泥団子。

前のブレーキ組み立て完了。
黒くなってるのは錆が再度回らないように耐熱塗料を。

試運転後のローターです。
耐熱塗料も走ればきれいに取れます。
ローターの幅全面が接触したらブレーキの効きが復活です。 

たぶんですがこのお車の場合前回の整備(1年前の車検時)にはすでに錆は発生してたと思うんです。
そんな短期間で発生した錆の量や厚みではなかったので前回整備時に錆落としやちょっと一手間かけて軽く磨いておいてあげればこんなことにはならないですけどね。

雪国では凍結防止剤のおかげで普通に一冬でえらいことになるそうですが、ここは大阪です。
いくら乗らないお車でも2年に一度くらい軽く錆落としをしてあげたら普通は錆びません(キッパリ)

そんなわけでアルトはお仕事の足車として帰って行きました。
オーナーさんは「まだ動いてもらわないと困る」とのことでしたので活躍してくれるでしょう。

あとは余談です。
誰かがエンジンルームでパンを食べようとしたようです(笑)
食べてる最中に車が動いたのかここに隠しておいてあとで食べようとしたのかは不明・・・

ヘッドライトのくもりが気になってどうしても捨て置けなかったので磨いておきました。
本格的にきれいにするには時間と費用がかかるのでこのあたりで許してください。

精魂込めて整備させていただきました。
当店にご用命いただいてありがとうございました。