オートバックス 脱輪等防止策ってなに?

某オートバックスにて車検を受けたユーザーさんが突然のパンクでご入庫。
車検作業は令和5年7月ですからまあ半年ちょっと前。
納品書見せてくれたので参考させてもらいました。

過去にこのブログでハブクリアなるものをしてないのに価格に入ってとの記事を書きましたが今回もそれがどうなってるか興味津々(笑)

タイヤ交換でホイルを外してみたら今回はそれらしき「油」を塗ってあって
「おお今回はちゃんとしてるやん」と。

でもハブの中心は錆びてますけどどうなんでしょう。
自分の整備基準ではブレーキローターとハブ中心部分との固着を避けたいのでできればハブとローターの隙間にも塗ってほしかった。

そして納品書見るとハブクリアという記述はないものの
車軸面防錆処理工賃
という商品名になってました。
改名したのかハブクリアという名称は商品名で実際の納品書としてはこういう記述なのかな?

それはさておきその後ろの

脱輪等防止策

って言うのが今回気になりました。。。

これってなんでしょうか???
油を塗ることで錆ができずにその結果脱輪防止という意味なんでしょうか?
それとも何かプラスでナットを締めるときに特別な加工があるのかな(笑)
オーナーさんに口頭で商品説明でもしてるんでしょうか?
今回のオーナーさんは車検時にタイヤローテーションしてくれてる事実は知らず、ハブに油を塗る意味も「さて?」という反応でお金を払ってました。

実はこのお車、ホイル外すときナットが堅く締まりすぎててインパクトレンチを通常の4~5倍の時間かけてやっと緩むという状態。
まさかきつく締めるのが脱輪等防止策なのかな・・・なんて思いました。
本来は規定トルクで締めることが脱輪等防止策だと思います。
大型トラックのタイヤ脱輪の原因は締め方が足りなくて緩むよりは締めすぎてボルトが延びてヒビが入ってそこから破断、というケースの方が多いとか。

自動車整備士というもの、働く工場の環境や経営方針によっては仕事を急がされてついつい丁寧な仕事が出来ずにバババってインパクトレンチできつく締めてはい終わり、となる気持ちもわからんではないです。
ただでさえ人手不足なのに大きな看板をしょってる会社は従業員を守るため一件でも仕事を取ろうとします。
丁寧な仕事をしたいのに現実には無理、と嘆いてる現役の大手新車ディーラー整備士の話も聞きます。
会社は新商品や整備メニューを作って売って入庫させ、それを処理する現場ではついつい急ぎの仕事になる。

そのあたりは自分みたいに自営してて作業のクオリティに責任及び自己満足が重なる立場の人と、雇われて作業する人の間には埋めがたい溝があるのも事実ですね。
会社全体で顧客の方を向いてモチベーションを共有できる工場なら最高なんですけどね~

単なるパンクでタイヤ交換というだけの作業でしたが、最後まで気になるんですが

脱輪等防止策

ってなに・・・・??

スペーシアMK53S ハスラーMR52Sなど ダブルテンショナーISGベルト交換方法

スズキのマイルドハイブリッド車でスペーシアのMK53S型とかハスラー(MR52S型とかMR92S型とか)はベルトテンショナーを2個使ったタイプがあります。
そのタイプのベルト交換は既存の工具を駆使してもなんとか作業できますがKTCの工具を揃えておくと時短になります。

基本的な構造はこんな感じ(KTCの工具の説明書から借りました)
アッパーとロアーのテンショナーをピンで固定してベルトを外すという単純な事なんですが、とにかくエンジンとメンバーの間が狭いのでそのスペースに対応できる工具を持ってるかどうかが肝心です。

実際の作業ですがこのISGのベルトを外す前にコンプレッサーベルトを外さないといけません。
外すにはストレッチベルト脱着ツールを使うか切断ですね。
うちでは汎用の脱着ツールで外してます。(取付はまたちがうSSTで)

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コンプレッサーベルトが外れたらいよいよテンショナーのロックですね。

固定ピンだけでも売ってますね

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下のテンショナーを動かしてピンを刺す

上側も同様にテンショナーを動かしてピンでロック

2個のテンショナーをロックさえできればISGベルトはいとも簡単に外せます。

取付はベルトをセットしてテンショナーを固定したピンを外せば完了。

 

スズキのマイルドハイブリッド車はISGでエンジンを補助するのでベルトの負担がかなりきついみたいでだいたい4万㎞超えるとほぼひび割れしてます。
うちのお店の交換目安はそのベルトの使用が4万㎞超えたら、ですね。
距離を乗らない方でチョイノリ多い方は5年超えたら要確認です。

左が新品 右が外したベルト

ISGベルトが終わったらエアコンベルトの取付。
これも隙間が無いので工具を選びます。
スズキの純正工具を使ってます。

KOTO製の工具を使ってる方も居られます。(ナリタオートさん出典)

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専用工具は揃えることが可能であれば揃えた方が良い仕事が出来るという方針です。
切れない刃物は余計な力が要るけど手入れされた刃物は力も要らずにきれいに切れ良い仕事が出来る、と先人に教えてもらったからです。
もちろん工夫して一から工具を作ったり既存の工具を知恵と工夫で使いこなしてる達人も居られますが、自分はそういう奇抜な発想力が無いのを自覚してますので工具買います・・・・・・。

2024年3月 整備のまとめ レジェンドハイブリッド車検など

おかげさんで2月の半ばから3月まで入庫が続いてまして一つ一つの事案で記事をアップすれば良いものを気づくと3月10日に近いという・・・
なので気づいた事案などをまとめてみました。

ダイハツムーヴ LA100S  走行38000㎞
信号待ち中にエンジンのどこかの気筒が失火してエンジンが触れ出した、ダイハツはイグニッションコイルが弱いから壊れたかも、とご入庫。

症状の説明が具体的なのはうちの元の従業員さんだから。
現在は引退されて日々の生活を楽しんで居られます。
整備士が症状説明してくれるのだから当たり前ですがわかりやすい。
イグニッションコイルアナライザーでいろいろ比較。
結論から言うと「デンソー製のプラグが原因」でしょうね。
コイルの出力やその他プラグ本体の焼け状態見ても違和感はない。
けれど見当付けてNGK社製のRXプラグに交換したら加速が入庫時と全然違うなめらかさ。
ダイハツ+デンソープラグの組み合わせ不具合を久しぶりに体験。

日産モコ(スズキのMRワゴン)車検でご入庫。
走行距離が少ないお車ですが青空駐車の影響もあってブレーキローターに錆が侵入。
パッドとローターの接触面積が減ってるとどうしても自分の物さしではNG。
許せないのでここらで一度手入れしておきますとご提案。

ローターをきれいに。

そして変な減り方になってたパッドもきれいに。

ホンダレジェンドハイブリッド KC2。
お客さんはなじみのお客さんですがこのお車の入庫は初めて。
正直見たことも乗ったこともなかったので構造を一から事前に予習。
勉強すればするほど、「よくぞこれほど駆動力を制御をしてる車を世に送り出したもんだ」と。
前側のタイヤをエンジン+モーター1個、後ろのタイヤを2個のモーターで駆動。
すごいことしてるな~、と思う半面この車を整備するのかとドキドキ(笑)

仕組みはすごいとは言え消耗品は基本的なものであることに間違いは無いのでその辺りは粛々とメンテナンスさせていただきました。
トヨタ系のディーラー中古車で2年前に車検を受けて購入されたようなのですが・・・
記録上ブレーキフルード交換となっていますがこれって2年前に交換したブレーキフルードですか???

途中まで減らしてみたけれどタンクの底が見えません。
う~ん・・・・ほんまに交換した??

減らした上で新しいフルードをちょっと足してみたらかろうじて底が見える程度。

なんだかな~と悶々としながらブレーキフルードの交換。
さすがにハイブリッド車なので普通の交換手順ではなかった。
トヨタ系のハイブリッド車みたいに診断機を繋いで・・ではなく、

レジェンドハイブリッドのブレーキフルードの交換方法は

  1. アシスタントを乗せてペダルを踏んでもらう
    キーをオンにして4輪交換
    右前⇒左前⇒左後⇒右後 つまりは反時計回りに4輪。
  2. そしてキーをオフにして3分以上待って4輪交換
    これまた反時計回りに右前⇒左前⇒左後⇒右後と一周

※交換途中は乗ったままでドアを開けてはいけない

と通常の倍の手間と人員を使っての作業が必要と整備要領書を読み込んで作業。
予習のおかげ(得意満面)でなんとかクリア。

ブレーキフルード交換が終わってエンジンオイル+オイルフィルターの交換、とコマを進めるとここでも新たなトラップ。
オイルフィルターを強く締めすぎていて既存の工具では歯が立たない。
トヨタ整備士はまたやっちまったな(笑)

しばし方法を考えて工場の中をうろうろ。
そしたら古い工具のエリアに昭和時代のフィルター外しの工具が。
錆が回ってますが、「先代の父上ありがとう」、といそいそ使わせていただきました。
おかげで堅いフィルターに打ち勝つことができました。

新しいフィルターは決められた締付トルクで取付。
どこかの誰かが困らないように。

戦いの跡

レジェンドのオーナーさんが「ブレーキの効きのムラがあるように思う」とおっしゃるのでブレーキローターの振れを測定しようとダイヤルゲージを持ち出して測定。
あらためて文字盤を見るとなんとCITIZEN製。
JISマークも入ってますから正規品です。

あの時計のCITIZEN。
時計の技術を応用して精密機械を作っていたんですね。

実はこっそりとYoutubeチャンネルを持ってるのでよかったらチャンネル登録してください。
ほんとに時々ですが動画をアップしています。

そしてなんとレジェンドはホイルを取り付けてるナットの頭は22㎜。
(通常このサイズの国産車は21mm)
こんなサイズのナットを見たのは初めて。
こんなところがホンダらしいけど整備する側からするとちょっと焦る。

ちなみに締付トルクは127Nm。
この値も初めてでした。

あとはハイブリッド車の電動コンプレッサー対応のカーエアコンサービスステーションデュアルでガスを規定量にきっちりと。
POEタイプのコンプレッサーオイル対応のマシンでないと故障の原因に。

さて、次は・・・
時々水温が上がり気味のワゴンR MC22S 平成15年式の16万㎞。
たぶん今まで一度もサーモスタットは変えてなさそうなので交換。
取り付ける前に新品と比較。
同じ温度で開くスピードと開く量が明らかに違ったのでこれは経年劣化でしょう。
左が新品で真鍮の部分の移動量が違うのがわかります。
移動量=弁の開度ですからこれでよくエンジンは冷えるようになるはず。

サーモスタットと同時にラジエーターキャップやら気になる配管あたりを同時交換。
手間は一緒なのでこういうときにちょっと範囲を広げて部品交換しておけばお得ですね。

まあこんな感じで3月はこれから後半戦。
落ち着く日はなさそうな予感・・・・

 

スカイライン ECR33 ハイキャスコントローラー修理

ニッサン スカイライン ECR33 平成6年式 走行約74000㎞

パワステが、据え切りのときに重い、ということでご入庫。

・ 全然効いてないことはなくなにかしらアシストはしてる
・ ガレージにオイル漏れのあとは無い

との問診で油圧系統に不具合はなさそうとは第一印象。

あとはハイキャス(HICAS)ランプが点きっぱなしとのことで、電気的な制御が不具合でフェイルセーフ(緊急最低限動作)してるな、ということで診断開始。

このあたりの年式の車は診断機でつないで数値を見るというやり方は少なく、いろんな動作、たとえばファミコンでいう「上上下下右左右左BA」みたいなことをやってコンピュータやらコントローラーと対話します。
そして既定のランプが出すモールス信号みたいな点滅を読み取って診断します。

所定の動作を実行。
でも何の反応もせずランプは光ったまま。
この時点でコントローラーが動いてなくて気を失ってる予感。

さてこうなるとひとつひとつ可能性をつぶしていかないといけません。
けれどもこの時点で先行きは「コントローラー本体が壊れた」という悲しい予感しかしません。

診断フローチャートに則ってひとつひとつコマを進めます。
まず全体的な回路を見て入力される信号と出力される信号を把握。

車の電気的な制御は
「目で見て脳が判断して手足を動かす」です。
センサーが計った電圧を入力してコントローラーが考え動作機器に命令を出す、ということです。

入力と出力それぞれを測れ、と診断フローチャートに書いてます。

全ての項目を診断。
入力系の回路は全てOKまで進みました。

パワステのアシスト量を決めている出力電圧が1.8VでNG
電圧が低いのでアシストされてないわけです。

NGの先はC/U不良(コントロールユニット不良)

はい悪魔の宣言がなされました。

ここで普通なら「コントローラーあかんわ、髙価やけど交換しかないな~」となります。
でも平成6年式・・・・
製造廃止で新品は手に入りません。
仮に手に入ってたとしても廃止直前の最終価格は314000円。
絶望的な流れ(泣)

幸いなことにこの時代のコントローラーはネジを外せば中を見られることが多いんです。
いまはプラスチックで固められてるので不可能です。

このままではあきらめきれないのでとりあえず開けてみます。

開けてはみたもののプリント基板の回路が読めるほど技量も持ち合わせていないのでただただ眺めるだけ。
ただ、電圧が異常値とはいえ1.8V出力されているということは完全にコントローラーが死んでるとは思えなかったので突き詰めて配線を追うのではなく時間が空いたときに「新鮮な目」で何度となく眺めました。

そしたらひとつのコンデンサーの根元にわずかに液の漏れた跡あるのを発見。
よし、こうなったらダメ元でコンデンサーを総替えしてみよう、と計画。
地図を書きました(笑)

拾い出したコンデンサーを入手。
交換しました。
全部で24個。
仕事の合間でぼちぼちやってのべ10時間以上かかりました。

交換が終わって元通り組み立てて現車に装着。
なおってくれよ~とエンジン始動。
結果は変化無し       (゜◇゜)ガーン
ハイキャスランプは点いたままで自己診断も受け付けず出力信号は1.8Vのまま・・・

さて
さて
さて  次なる手は・・・

また基板を眺めることにしました。

一番怪しいのは、液漏れで汚れていた部分、ぐらいしか手がかりが無いのでそのコンデンサーをもう一度外して、付近をスマホの顕微鏡モードとかを使って再度確認。
そしたら

「あれ?基板のラインが液漏れのとこで途絶えてないかな?」

と。

テスターで導通を見てみたら

ここ腐食で切れてるんと違う?

この時点で確証はないけどとりあえず基板を修理

紫外線硬化型接着剤で絶縁

再度の再度元通り組み立てて現車に装着。
エンジン始動。

ハイキャス警告灯消えました。
ハンドル軽くなりました。
自己診断も受付けて異常なしの点滅をしてくれました!!
よかった~

長かった。
ぐったり・・・

ふたを開けられるコントローラーで良かった。
修理できました。
現在のコントローラー類でしたらこうはいかなかったと思います。

スカイラインはまだユーザーさんとの縁を切りたくないんでしょうね。
末永く健康に!!

この作業するのにさてハンダゴテを、と思ったら寿命で使えず、温度調整ができる今どきのハンダゴテに買い換えました。

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ついでにコテを置く台も錆びてボロボロだったので同時交換

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久々の電子工作でした。

スズキのブレーキパッドの謎 その3

何度かお伝えしてますがうちのお店はスズキの車が好きで、そうなるとやはりスズキのお車に乗ったお客さんが増えてきます。
するとスズキ車をお手入れすることが増えてきて慣れてきます。
その結果故障診断が早くなったり部品の交換が早くなったりしていい循環が生まれます。
スズキの車に乗ったお客さんに囲まれていると幸せを感じるんですね。
お店もお客さんもスズキ車というキーワードでつながれるんです。
ひとつのフィールドにみんなが入るとメリットは大きいと思っています。

そんなこんなで平成26年式のパレットMK21S の車検をお預かりして、診断の結果ブレーキパッドは交換が必要となり注文しました。
うちのお店ではスズキ車のブレーキパッドは純正を使います。
異音止めのシムも最初から同胞されているので同時交換できてそんなに社外品と価格も変わらないからです。

さて本題ですが、スズキ車はブレーキパッドの形が見た目は一緒でなおかつコストダウンの目的もあって割とブレーキパッドはいろんな車で共通化されています。

うちではだいたい部品番号で55810-81MB1というパッドは在庫してると以前にブログでも書きました。
パレットも同じパッドなんやろな~とたかをくくって発注してみたらなんと部品番号が違いました。
パレットは55810-82K00です。

注文して部品が届いて箱開けてみましたが単品で見る限り以前の記事と同じ事で「見た目は何も変わらない」状態でしたので手元にある55810-81MB1と見比べてみました。

これもまた以前と同じでなにも違いがわからん・・・が第一印象でしたが裏返してみると

スリットが2本入ってました。
ここは大きな違いですね。
パッドの材質的な違いとか色合いはほぼ一緒に見えました。

 

大きさとかパッドのカーブとか面取り部分の角度とかも見比べてみましたがほぼ同一という感じ。

見た目は過去の記事に比べて大きさや形はほぼ一緒というのが結論です。
ただ時代に応じてパッドの材料とか堅さとかは違うんでしょうね。
使ってるブレーキローターとの相性も考慮してるはずです。

あと大きな違いはパッド摩耗警告を出す座金が55810-81MB1は付いてるけど55810-82K00の方は付いてないということですね。
付属してる異音防止のシムの形状は全く同じで互換性ありですね。

間違って取り付けても普通に違和感なく取り付け可能とおもわれます。
見た目一緒で機能的にも一緒でたぶん普通に使えるとは思いますが、やはり番号が違うということは我々の知らない領域でいろいろ改良が加えられていたり不具合が発生して改良が加えられたりして進化を遂げていき番号に変化があるんでしょうね(曖昧)・・・・
えらいこっちゃ、とならないようにうちでは指定の部品を使うようにしています。
なんと言ってもブレーキの部品ですからね。

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スズキパレット プーリーが錆びないように手当てする

今回は車のウィークポイントがわかってるのであれば大事に至る前に手当てをしてみました、と言う話です。

スズキパレット MK21S 平成23年 6万㎞。
車検でご入庫です。
普段からお付き合いのあるお客さんで、当店がインターネットでホームページを開設した当初にお問い合わせいただきそこからお付き合いの始まり、かれこれ15年くらいお世話させていただいてます。
本当にありがとうございます。

いろいろ乗り継いでおられますがこのパレットも乗り換えられて初めての車検でした。

車検作業は消耗品中心にうちでの初めての整備になりますので「うちの基準」にて整備提案。
あとはお客さんの予算とすりあわせの後、作業しました。

パレットというと当時タントが爆発的に売れていて、スズキがあわてて作った作品。
残念ながら急ごしらえが影響してか詰めが甘くてリコールがたしか4~5回施された覚えがあります。
とはいうものの手当てをすれば決して乗れないお車でもなく、中古車の場合、前ユーザーがどこまで投資してくれてるかなど「運」もあります。

このパレット
雨水が流れる経路に具合の悪い設計があって、垂れた水が悪さをしてオルタネーター(発電機)のプーリーと言われるベルトが引っかかる部分が錆びるという弱点があります。
割と有名な話なのでインターネットでも事例が引っかかったりします。
うちがパレットを預かるときはこの部分は必ず点検します。

そして今回も錆びてないかな~と覗いてみると「う~ん、ちょっと来てるなあ~」という感じ。
ベルトもそこそこ劣化してるのですか今回は出費をずらせるよう次回の整備箇所として・・・。

今回は幸いなことに雨水が垂れた痕跡はありません。
水を上から流して漏れテストしましたがなんとか間に合ったようです。
この少し下がった部分に雨水が集中して最後に垂れます。

垂れた下に位置してるのがプーリー(偶然に近い)なので、頻繁に動く車ならなんとかなるんでしょうけど、休日にしか動かない車だと垂れ続けた雨水がかかり続けるため不利です。
ここにはスポンジでできたパッキンもあるので最初のうちは大丈夫ですが経年劣化が進むと垂れてくるんですよね。

手当てはこの黒い「カウルトップ」と言われる部品を一度外して、スポンジを張り替えれば良いのですが、手間はそれなりにかかるので今回は全くの対処療法で垂れる水を「ずらす」という手法で手当てしました。

これなら費用もかかりません。
いざ垂れてきてもプーリにさえかからず違うところへ垂られてくれたら良いのでアルミテープを使って「雨樋」を追加しておきました。

パレットも年式が進んだお車が増えてきて、修理にお金をかけてもらえない車もそれなりの数になってきました。
延命措置ではないですが費用をかけずなんとか乗ってもらえたらええな、とすこしごまかしみたいな作業になりましたがプーリーが傷んでいくスピードは抑えられたのではないかと思います。

ちなみにニッサンのルークスもこの年式あたりのお車はスズキからのOEM車なので同じ事になります。
ご用心・・・・

 

 

セドリック プロペラシャフトセンターベアリング&デフセンターシール交換

セドリック Y32 平成3年式
時々ブログの登場する大事に維持されてる幸せなセドリックです。

今回はプロペラシャフトのセンターベアリングあたりからの異音を手当てしました。

お客さんに教えてもらうまで知りませんでしたがプロペラシャフトをリビルトしてくれる業者さんがあるとのことでそちらで手入れされたプロペラシャフトを使います。
愛車に対する知識は整備する側でプロでもかないません。
一緒の共同作業ですね。

んで話はプロペラシャフトを交換するということで進んでいたのですが、実車を見るとデファレンシャルギヤケースのセンターシールからデフオイルが漏れ始めてたのを発見。
こう言うところも運が良い車は早めの手当てができて結果的に長く乗れるんですね。
一連の作業の延長で工賃的にもかぶる作業なくシールも同時交換できてよかった。
まずはデフオイルを抜いて

もろもろ取外し

デフの下のドレンボルトは磁石になってるので鉄粉が吸着されてるのでフキフキ

新旧のオイルシール

組み立てて終了

愛情を受けてるお車はなにかと調子よく末永く動きますね。
日頃の心がけと言えばそれまでですが「壊れたら乗り換えるねん」という方以外は日々の愛情次第でしょうね~

というわけでセドリックは愛してくれてるオーナーさんのもとへ帰っていきました。

バッテリーを替えた~ って安心してませんか?

どちらかというと整備士さん向けの話です。

エンジンが掛からないという一報が来たとします。
大抵のお客さんはこう言ってきます。
でも我々整備士は一番初めにセルモーター(スターターモーター)が動いているのかどうかを知りたいんです。
なので問診の最初に「セルモーターは回っていますか?」と聞きます。
この時点で「?」マークの方も居られますが・・・
なので

キーをひねったりボタンを押したら車から何か反応ありますか?

という風に聞き直したりします。

何も反応しない
カチャ、と音が鳴る。
カチャカチャ言うてる
メーターのランプはいっぱい点いてる
・・・などなど

なかにはセルモーターは回ってるけどエンジンが掛からない、と伝えてくれる方も居られます。

まあそんなこんなでエンジンが掛からないという一報でおおよそ半分以上はバッテリーが放電してしまっていてエンジンに「助走」を与えられずにかからないという感じです。

その修理というと

バッテリー交換

で全て解決というのが大半。

ただなぜバッテリーの電気が足らなくなったかは誤解を恐れず大きく分けると
・ バッテリーの寿命=電気を蓄える能力が劣化した。
・ 充電系統(エンジンかかると自家発電します)が壊れた。
のだいたい二つです。

どちらにしてもバッテリーを交換するという作業は充電系統がしっかり働いてるという前提での解決方法です。
充電系統が壊れてるとバッテリーをいくら交換してもそのバッテリーの電気がなくなれば終了です。
我々整備士は上記のおおまかな二つの原因の最終的な確認事項として、バッテリーが健全でその上充電系統に問題が無いと判断したときに整備が終わりお客さんに車をお返しするという段取りになります。

自分がする最終点検は
エンジンが回ってない状態でバッテリーは12.6V以上。
エンジンが回ってる状態でバッテリーが13.8V以上になってるか

充電電流が最大負荷をかけてもマイナスになってないか?

発電機の発生電圧の波形に異常が無いか?

そして発電機とバッテリーの間にロスが無いか?
発電機の出力端子とバッテリーのプラス電極の間を測って電圧降下が多くないか?
を診てOKとします。

発電機で恐いのは発電してるけど足りない、というときもあるので念には念を入れてと言う感じですかね?
でないと数日後にまたバッテリー上がり、という整備後にまた整備という恥ずかしい事態に陥るので避けて通りたいストーリーなんです。
もちろん遮断されないといけないのにずっと電気が流れてしまう故障も有ります。
これはまた別の診断で有るのですが写真撮るのを忘れたので今回は割愛。

まあしかし最近はバッテリーが劣化するという事象を知らないお客さんが増えてきてその説明に四苦八苦することがあります。
スマホも古くなると1回充電しても持ちが悪くなっているのを経験してる思うのですが自動車のバッテリーとは繋がらないようですね~

自分は泥が溜まって上げ底になったバケツ、と説明してます。
見かけは水が満タンやけど実際は大半がごみで溜まってる水は少ないねん、と。

女の人には新品のスポンジと干からびたスポンジではどちらが水をためられますか?

と。

さて・・・理解してもらえてるのか?(笑)

あと最近思うのは「エンジンが掛からない」という言葉が「エンジンが点(つ)かない」という言葉に変わってきてて困惑します。
たしかにボタンひとつで動き出すので「点く」というのはわからんでもないですが、言葉は生き物でその時代で変化するというのを実感します。

アルト ブレーキの効きが悪い

スズキ アルト HA24S 平成18年式 走行約17000キロ

整備内容の説明のためにブログにしました。

年式の割に距離が浅いお車です。
「ブレーキの効きが悪い」という一報でご入庫です。

どんな風に効かないんでしょうか?

ブレーキを踏んでも車が走ろうとする感じ

こんなやり取りでその時はブレーキパッドが消耗してしまってブレーキローターを削りまくってるのか?とかブレーキのどこかが固着してるのかと入庫まで悶々と想像します。
うちの管理車両ならブレーキが固着するなんて言うことは無いように普段から手入れしてますがお得意さんの併有車なのでこのお車の入庫は初めてになります。

ということで入庫してから確認すると年式にしては距離が浅い。
と言うことは裏返すと止まってる時間が長いと言うことですね。
お預かりしてすぐにブレーキローターを見ました。
かなり錆びてえくぼだらけ。
この時点でまずこれかなと思いましたがまずは試運転。

ブレーキを踏んでみるとたしかに他の同型式のアルトと比べても効きが悪いのはわかりましたのでとりあえずリフトアップ。
裏側からブレーキローターを見たら
「ああこれか」という状態。

光ってる部分が実際ブレーキ力を発揮する部分です。
ほんとはローターの全幅が光ってないといけないんですが距離の浅いお車はどうしても錆が回ってしまいます。
ちょこちょこ動いてると錆びても何回かのブレーキで錆は落ちるんですが錆の方が強くなってしまうとこうなります。

雰囲気はわかったのでとりあえず4輪ともブレーキを分解して点検開始。

後はオーソドックスな感じですが、ブレーキシューの表面をサンドペーパーできれいにして最後はブレーキの隙間を目一杯詰めて調整します。
これだけでも効きが変わります。

ブレーキ調整が終わったらセンターナットを規定トルクで締め付け。

ナットを締めたらカバーを付けますが前回の整備の時にちゃんとした工具を使わずに取り外したため凸凹にしてしまっててこのままでは水が入ってベアリングが錆びてしまうので新しくします。

取り付けるときも真ん中をハンマーで叩くとこれまた凸凹になるので「縁」を叩けるよう工夫が必要。

これでよし!

外側の錆もできるだけ落してあとはお化粧しておきます。
性能には関係ないですがちょっとしたこだわり。

次は本命の前のブレーキを分解点検
表からの錆よりも裏側の錆がひどくてブレーキパッドとローターが半分くらいしか接触してないんですね。
これでは「効かない」と感じるはずです。

錆のおかげでいびつになってしまったローターを研磨(研削)して修正します。
まずはブレーキローターを取り外します。

取り外したら研磨機に接する部分の錆取り。

そして旋盤で材料を削るのと同じで均一に面を出していきます。

出来上がり

あとはローターを組み付けるだけ・・・ではなく自分なりの基準で組み立てていきます。
ローターの取付部分の錆取り

ピストンを押し出して錆びてないか、汚れてないか、固着してないかを確認。
この場合も汚れをできるだけきれいにしてからゴムとピストンの間に注油しておきます。

ブレーキパッドを支えるホルダー。
この部分にグリスを塗る整備士さんが多いですが自分は塗らない派。
ご覧の通り摩耗粉とグリスが混ざり合って泥団子になり悪影響しかないと思うからです。

グリスをきれいに落してその上で磨き上げておきます。

スライドピンへの注油も必ず。

今回ブレーキパッドは残量もたくさん残ってましたが、錆のおかげで変な減り方になっていたのと、距離を考えたらきっと新車から一度も交換されていなくて硬化してると思ったので新品をチョイス。
スズキの純正を使うと音止めのシムも新品で付いてくるので何かとお得。
リフレッシュには最適です。
シムとパッドにもグリス塗る人居ますが自分はここでも塗りません。
理由はグリスが異音止め効果がほぼ無いのとやはりここでも泥団子。

前のブレーキ組み立て完了。
黒くなってるのは錆が再度回らないように耐熱塗料を。

試運転後のローターです。
耐熱塗料も走ればきれいに取れます。
ローターの幅全面が接触したらブレーキの効きが復活です。 

たぶんですがこのお車の場合前回の整備(1年前の車検時)にはすでに錆は発生してたと思うんです。
そんな短期間で発生した錆の量や厚みではなかったので前回整備時に錆落としやちょっと一手間かけて軽く磨いておいてあげればこんなことにはならないですけどね。

雪国では凍結防止剤のおかげで普通に一冬でえらいことになるそうですが、ここは大阪です。
いくら乗らないお車でも2年に一度くらい軽く錆落としをしてあげたら普通は錆びません(キッパリ)

そんなわけでアルトはお仕事の足車として帰って行きました。
オーナーさんは「まだ動いてもらわないと困る」とのことでしたので活躍してくれるでしょう。

あとは余談です。
誰かがエンジンルームでパンを食べようとしたようです(笑)
食べてる最中に車が動いたのかここに隠しておいてあとで食べようとしたのかは不明・・・

ヘッドライトのくもりが気になってどうしても捨て置けなかったので磨いておきました。
本格的にきれいにするには時間と費用がかかるのでこのあたりで許してください。

精魂込めて整備させていただきました。
当店にご用命いただいてありがとうございました。

2023年11月前半の様子

11月はモビリティーショーから帰ってきたら仕事がてんこ盛り。
予定外の作業が沸いてきて気持ちが張り詰めたまま今日に至るという感じです。
まだ波は終わってないんですよね・・・

なので個々の作業を一つ一つ記事のできず総集編。

 

平成12年の初代RAV4 ZCA26 7万㎞
23歳までフロントブレーキのキャリパーを分解してないのでやはりこのあたりできれいさっぱり安心を積み重ねていこうという流れ。
ピストンを抜いてみましたがさすがは平成の日本車。
きれいなもんです。

ちょっと拭いてみただけでほぼ再使用可。

まだまだ働いてもらう予定です(オーナーさん談)

マツダデミオ DJLFS 平成27年式 ご新規さん
車検でヘッドライト光軸を点検。

基準のラインからどれだけ上向いてんねん、という状態。
最近のお車はこんな状態の時、ヘッドライトコントロールを初期化しないといけない場合もありますが、デミオは初期化してもこの向き。
長いこと対向車に迷惑掛けてたのでは、と想像しながら前回の整備をした工場はどんな合わし方したんかななど悶々と基準に調整し直し。

Y32セドリック ローター研磨をご希望。
4輪ともきれいさっぱり。
今回はパッドは交換しなくてローターのみの作業。
パッドもリセットしないと・・・

ホンダ ステップワゴン RK1 平成22年式。
ホンダのこのあたりの車輛定番のフューエルタンクの蓋のひび割れからの燃料漏れ。
火災に繋がる恐ろしい故障です。
この前のステップワゴンも平成19年式だったので登録から13年越えはこの部位を疑った方がよさそうですね。
蓋だけでも交換できますが今回は走行距離も勘案して燃料ポンプごと交換しました。
ポンプを交換しないですぐに不具合が出たらほぼ同じ工程を繰り返さないといけないので予防整備させてもらいました。

漏れたガソリンが溜まってるのを見ると作業中に火災が起きないか緊張して恐いです。

このひび割れが全ての元凶
プラスチックの劣化が原因。
なので乗っても乗らなくてもその期間が過ぎたら割れます。

最初はこんな白い部品ですが長年ガソリンに浸かって色変わってます。

すっきり!!

スズキスペーシアカスタム MK42S 平成28年式。
ドアミラーに付いてるフラッシャーユニットが不灯。

よーく見てみると角を何かにぶつけた跡が・・・・
レンズが思いっきり割れて中身がむき出しの場合でも点灯する個体もあれば、こうして何かの衝撃でユニットの中の基板そのものが壊れてしまう場合もあってケースバイケースだなと独り言。

そのスペーシア。
スズキマイルドハイブリッド車は発電機ベルトの負担が大きいので短距離で痛みます。
今回も登録から7年、33000㎞ですがベルトの破損が始まってます。
マイルドハイブリッド車は要注意!

 

さてさて前半でも密度が濃い11月ですが、お仕事着工をお待ちいただいてる方々もおられます。
一つ一つ進めていきますのでもうちょっとお待ちくださいね。