エンジンオイルから出てくる泡の謎

エンジンオイルを交換するのに大まかに二通り。
『下抜き』と『上抜き』という方法があります。

下抜きとは、エンジンの下部にあるオイルパンから抜き取り用のボルトを抜いて自然落下で抜き取る方法。

上抜きとはオイルレベルゲージの穴を利用して真空状態を作れる工具を使って吸引して抜く方式。

どちらの方式も一長一短ありますし、エンジンの構造上下抜きでしか対応できないお車もありますし、ベンツなどではメーカーが整備方法として上抜きが指定されてるとか。
(外車のことは知らないので伝え聞き)

うちのお店では上抜き可能なお車はできるだけ上から抜くようにしてます。
オイルを抜くボルトを付けたり外したりするときに何かのはずみでネジが壊れたりするリスクを避けるのと、ボルトに付けるパッキンの節約になるのでお客さん負担も減るからです。

さてここからが本題ですが、ある日上抜きでオイル交換をしてるときに出てきたオイルがやけに泡立つときと泡立たないオイルがあることにふと気づきました。

そして抜き終わった後にこのまま真空状態を続けたらどうなるんだろうと自分の中の「実験君」が出てきてそのまま観察してると泡はオイルの中から無数に沸いていてそれからだんだん泡が消えていく。

そしてまったく根拠もない自分の中の空想ですが、これは

オイルの中に取り込まれた水分が真空状態で沸騰して出てきてるのでは?

と推測。
そして水分が沸騰しきってオイルの中から出終わると泡が消えていくのではと。

そんなことに気づくとこの泡の元はなんなんやろう?と疑問に思い、そこから数十台観察してみました。

すると泡が出てくるオイルは短距離走行を繰り返す車に多いという傾向があること。
同じような走行距離で同じような汚れ方をしてるように見えるのに通勤に使ってる車で通勤距離がそこそこ走るよう車は泡が少なくて、子育て中のお母さんが乗るような自転車代わりのチョイノリな車&ハイブリッド車に泡が多い感じです。
つまりはエンジンが暖まりにくい乗り方をしてる車に泡が多いのでは?と思います。

ガソリンが燃えると水が発生します。
その発生した水のほとんどは排気管から出ていきますが一部はオイルの取り込まれます。
一度でも長距離走行があってオイルが充分暖まるとその水分はオイルの中から蒸発していきます。
オイルの沸点より水の沸点の方が低いからですね。

オイルが温まらない乗り方をしてる車は水分が蒸発せずにオイルの混じったままになります。
その水分はエンジンにはよろしくないので、オイルが暖まりきらない短距離走行を繰り返すシビアコンディションの車はオイル交換をまめにしましょうとなるわけです。

オイルの成分の中には『消泡剤』という泡を消す成分も含まれているのでその性能が劣化したら泡が発生しやすくなるということもありますので何とも言えないのですが・・・

泡が出てきてるのはオイルの中から、まさにビールやコーラの炭酸の泡が液体から出てくる様子とそっくりなのでひょっとしたら水が真空で100℃でもないのに沸騰してオイルの中から気体になって出てきてるの??と思った次第です。

もしこの仮説が正しいのならオイルが水分含んで傷んでますね~という新たな指標になると思うのですがさてどうでしょう??・・・・

動画も張っておきますのでご参考に

Play Video: オイルから出てくる泡の謎

ワゴンR エアコンが冷えない MH34S

エアコン冷え不良のシーズンまっただ中でお問い合わせ・相談が連日続いてます。
そんな中 ワゴンR MH34S なにかしら冷えてるような風は出てるけど明らかに冷えてる感じがしないと言うことでご相談を受けました。

明らかに冷えてないのでいろいろ測定器具を装着。
スナップオン社製カーエアコンサービスステーションデュアルは圧力計も装備されてますのでいろんな装置をつながずとも総合的に診断器具として使えますので便利。

この日の気温はおおよそ33℃

吹き出し口の温度は約28℃

あきらかに冷えてない

その時の圧力は

エアコン整備を常々されてる整備士ならこの数字で『ガスが足りない』は判断できますね。
では『どれほど足りない』はなかなか当てられないのがガスの量です。
某カー用品量販店やスタンドとか慣れてない整備士ならこの数字でも『ガスは入ってます』とかいいそうです。
自分でもこのメーターの指示値で「どれほど足りない」と聞かれても答えられないのがガス量なんですよね。

ガスの量を診断するには

いったんガスを回収して精密なはかりでその重さを量る

しかないです。

ということで、少なそう、を前提に回収してみました。

するとワゴンRからは35gしか出てきませんでした。

これが新車から自然に減ってこれほどしか残ってなかったのか、どこかが漏れて減ってるのか中古車購入のご新規さんなので整備歴がわかりません。

ユーザさんにも

タイヤの空気と一緒で気体は自然に抜けてしまいます。
それが自然に抜けただけなら足せばまた使えますがもしこれが釘を踏んでパンクしていたのならまずはパンク修理からですね。

と説明しました。

その上で今回はガスを規定量にチャージしますがパンクを見つけるのは同時に注入する蛍光剤を使います。
しばらく走ってください

との了承のもとガスチャージしました。

規定量チャージしたあとの指示値です

最初と見た目何にも変わりませんね。
規定量320±20gに対しての35gですから『ほとんど無い』という状態と、正常な量になったあとの圧力計の指示値は高圧側の数字が正常になっただけです。
ガスの量は圧力計だけでは見分けるのが難しいです。

吹き出し温度は

スズキ車ではこのあたりで低温側のスイッチが切れますから正常な温度まで冷えるようになりました。

ガスが足りなくて冷えなくなるのは当たり前なのですが、以外に軽自動車クラスは100gあたりまでは結構冷えるように感じます。(冷えてないことにユーザーさんは気づいてない)
でもその時のエアコンシステムは少ないガスで全力で働いてるので部品に無理が掛かり、結果的にエアコンの故障に繋がります。

冷えてると言ってもぎりぎりなのか正常なのかでその先のコストが変わってくるのでタイヤの空気圧(つまりは空気量)を見る人は多いですがエアコンシステム内のガスの量にも気をかけてくださいね。
せっかく縁があって一緒の居る愛車なのですからペットと同じだと思います。
いつも健康に気を掛けてあげてください。
ついでと言ってはついでですがエンジンオイルの管理は基本中の基本と呼べる健康管理です。

※ 一週間後ワゴンRのオーナーさんは今度はタイヤのパンクでご来店。
ご縁があって再度お世話させてもらえました。
エアコンは今のとこ絶好調に冷えてると言うことでした。
ガスが自然に減ってたことをお祈りしております・・・・・

 

1234yfガス用添加剤 NC-200 施工しました

先日、nutec製 1234yfガス用のNC-200添加剤が入荷しましたというブログをアップしましたそうすると早速そのブログを見てお問い合わせがあり施工第1号として入庫いただけました。
わざわざ奈良からおいでいただきましてありがたいお話しです。

90ノアですね。
ガスは1234yf。
純粋なガソリン車ですので機械式コンプレッサーでした。

作業そのものはオーソドックスにカーステーションサービスデュアルにお任せと言ったところですがホース類が1234yf用のセクションを使うので普段よりは新鮮です。

そして添加剤は1234yfガス用のnutec NC-200です

施工後のアイドリング状態のガス圧。
気温に対していたって教科書通りの値です。

施工前に同じ状態で8.9℃だったので冷えるようになってます。

回収量がほぼ規定通りだったので優秀なお車ですね。
もうそれなりの台数の1234yfガスを施工し始めてますが3年走って66%の回収率だったお車もあります。
メーカによる違いではなくそれぞれの個体差という感触です。
まあそれぞれですね~

遠いところわざわざうちを訪ねてきてくださりありがとうございました。

 

ナビの取付時の確認ミスによる不具合のリカバリー

カー用品の量販店でナビやらドラレコやら取り付けるのは今は普通の話で、そういうお店の方がいろんな商品に対する知識が豊富で、さすがに太刀打ちできないなあ~というのが正直なところ。

どこのナビがええかな?と質問されてお答えできるのは、

「自分がマイカーに取り付けしてるメーカーのナビしか知らないので、そのメーカーのナビならなら使い方はレクチャー出来るよ」
「選ぶならそのメーカーにしといて」

というお返事が多いです(笑)

というわけでそれぞれみなさん某有名どころのカー用品店で取り付けされるのですが、偶然にも2台続けてナビ取付してもらってしばらく経ってあれが動かないこれが動かないと言うことに気づいておいでになられました。
だいたい異口同音で

「時間経ってるしいまさら取り付けの文句を言いに行くのも恥ずかしいしお金かかってもええからこっちで診て」

とか

「取付にヘマするところに二度と行きたくない」

という流れです。

日産のキューブ AZ10 平成12年

エアコンの吹き出し口の切換が途中で止まってしまう。
最近気づいたけどひょっとしてナビを取り替えたからかな?
取り替えてから初めてそのポジションに持っていこうとしたら動かないことに気づいた。

とのお話しで12ヶ月点検でお預かりしたので追加で診断。

吹き出し口の切換がエアコンユニットの中で引っかかってるのかと調べてみるも本体側は正常。
吹き出し口を切り替えるワイヤーを単体にして動かしてみても一定の場所で止まる。
ということはやっぱり吹き出し口を切り替えるダイヤル付近に原因がありそうなのでその部分を見たいということで分解開始。

取り付けられてるナビはフローティングタイプでモニター部分が別体のタイプ。
まずはモニターも含めて取り外さないと目的の場所にアクセスできません。
モニター外すだけで狭いところにあるビスを6本外さないと・・・

この写真に写ってるカバーを外したかっただけなのに目的まで遠い。

そしてナビの本体を外してやっと吹き出し口を切り替える部分を見ることが出来ました。
そしたらピンジャックがナビを取り付けた後処理が悪くて可動部分にはさまってました。
黄色いプラグですね。

こいつのおかげで切換が不能になってたんですね。
取り付けたあとに各部の動作確認をすれば防げたはずですね~


さて整備工場あるある。
同じような故障が連続して入庫する不思議な連鎖。

パッソです。(ダイハツのOEM車)
ナビを今流行りのアンドロイドナビに某量販店で替えてもらった。
先日ETCユニットの電源が入らず動かないときに気づいた。
交換が原因かわからんけど調べて、というご依頼。

電源が入らないというとまずは配線接続口を調べないといけないのでこれまたナビの取外し。

パッソはナビのカバーはどうしたらずれるのかと整備要領書を調べると、ダッシュボードの一番下の部品から取り外さないといけないことが判明。
こりゃまた遠いな~と思いながら作業。
このベージュの部分から分解。

ネジは6個、プッシュ式のクリップが3個

そこが外れたら次はエアコン周りのパネルの分解が必要。
ダイヤルの下に隠しネジがあるのでつまみを外してからの分解。

そこまで外してやっとナビを覆ってるカバーを外せます。

そして結論は
アース線の付け忘れ

両方とも量販店での取付の後始末というかリカバリーです。
ナビやドラレコを取り付けたあと、ちょっと範囲を広げて廻りの電装品などの動作確認をすれば防げる事象だと思うのですが・・・・。

大手のディーラーや量販店での現場は人手不足で次から次に指示される仕事に追われ最終確認がおろそかになる現場が想像できます。
若干同情もしますが残念ながらミスはミスです。

決して作業中及び作業終了の復旧の時のミスをゼロにはできないので、できるだけ出庫するまでに幾度もチェックを重ね不具合を発見できないといけません。
明日は我が身、と思い自分にも再度気合いを入れさせてもらえる作業でした。

エリシオン 走ってるとエアコンが効かなくなる

ホンダエリシオン RR1 平成16年 走行距離150,000㎞

電話での第一報は「エアコンが効かない」というお話しでしたのでとりあえずご来店いただきました。
ご入庫する前は「エアコンのA/Cスイッチの入れ忘れかな?」などど想像しましたが、ホンダのこの頃のお車はみんなAUTOスイッチを押すとエアコンのコンプレッサースイッチ、つまりはA/Cスイッチは自動的に入る仕組みになってるのを思い出して「それではないな」とつい独り言・・・

そして入庫されたので状況確認。
エアコンは全てオフの状態でお越しになられたのでこちらでオンしてみると普通に冷えます。

なので状況を詳しくお聞きすると
「最初は冷えてるんやけどしばらく走ると冷風が出なくなり風がぬるくなってしまう」
とのこと。

冷えてるときは冷えてるんやなと言うことでまずはガス漏れなどはいったん除外しつつもガス圧力は確認。
想定通りガスの流れ方はとりあえず大丈夫そう。
流れ方は把握できても「ガスの量」はこの2個の数値ではわかりませんのであとまわし。
人間でいうと血圧測っておおよそ正常という判断できても「血液量」はわからないことと一緒ですね。

となると次はコンプレッサーが回ってるかどうか。
見てる限りコンプレッサーはちゃんと働いてそうです。
次に気になるのは「しばらく走るとコンプレッサーが止まってそう」ということ。
となるとマグネットクラッチかそこへ電気を流す回路かと想像と仮説。

そうこうしてるうちに幸いなことにコンプレッサーのマグネットクラッチが切れて症状が出始めました。
症状が出るといろいろ原因を探せるの好都合。

止まってるときにはマグネットクラッチに電気が来てないことが判明。
そうなるとそれよりバッテリー側への上流に原因があると判断。

結論はマグネットクラッチに電気を流すリレーの接点焼損でした。
エリシオンのマグネットクラッチリレーはこれ。

新しいリレーは黒色

リレーを変えてからしばらくアイドリングで放置&試運転中もコンプレッサーが切れなかったので原因に間違いないと判断。

より確信を得るためにリレーを開腹(笑)

接点が緑青で緑色

接点表面が荒れてボロボロでした。

あとは念のためきっちりをエアコンガスを規定量チャージしてこの年の夏を乗り切る準備をしました。
4℃くらいまで冷えてるので大丈夫でしょう。

というわけでいろいろ原因が考えられるエアコンの修理としてはほぼ最低価格といっていい修理で済みました。

原因の絞り込みに失敗すると再修理やら再入庫やらお客さんにとってより一層めんどくさいことになるのでこういう修理はほんとに緊張します。

次の車検はしないつもりというエリシオンですが車検は令和7年の7月まであります。
もう1回夏を迎えるのでそれまで無事冷えていてほしいものです・・・・

1234yfガス用添加剤 入荷 nutec NC-200

いよいよエアコンの効きが気になる季節になってきました。
もう既に何件かは「エアコン効きません」とお問い合わせがあり、入庫して修理完了してます。

全く効かない、というのはほぼ故障のためでそれなりの手当てが必要なのですが、
・ 効いてるのは効いてるけどパンチがない
・ 去年より冷えが悪いような・・・
という曖昧(笑)は症状の場合、ガスの不足が原因だったりするんです。

そういうときはきっちりとガスの量を設計通りに入れてあげるだけで復活することも多々あります。
うちのお店ではスナップオン社製カーエアコンガスサービスステーションデュアルを設置しており134aガスも1234yfガスも既存の機械式コンプレッサー車も電動コンプレッサー車も全てガスを規定量測ってきっちりチャージできます。

1234yfガスにも対応

 

そしてガスをチャージするときに冷えるエアコンをより一層冷えるようにする添加剤を同時に注入してます。
写真は134aガス用のnutec社製NC-200という添加剤です。

 

そしてこのたび、今まで発売されていなかった1234yfガス用のNC-200が発売され入荷しました。

今までの134aガス用NC-200は箱が黄色でした



1234yfガスに対応できる添加剤が発売されエアコンガスチャージに選択肢が増えました。
大阪では今やエアコン無しはとんでもなく、冷えが悪いだけでも運転中の体調に影響します。
ぜひエアコンガス規定量充填サービスをお試しください!

MRワゴン12ヶ月点検 マフラー応急修理

令和6年のゴールデンウィークは暦通りの営業です。
連休と連休の間の平日にもご来客やとお仕事があって「開けてて良かった」という流れです。

MRワゴンは12ヶ月点検でご来店。

エンジンオイル交換が主な作業ですがリフトで持ち上げるので当然のように下廻りも点検。
するとマフラーの中間部分に目があいました。

おおこれはヤバい。
腐食により排気ガスの漏れが始まっています。
排気ガス廻りの漏れは保安基準に抵触しますから見過ごせない故障箇所になります。
もしこれが車検であればこのままでは合格できませんので即刻対応が必要になります。

ワイヤーブラシでこすってみると小さな穴が開いてます。

マフラーからの排気ガス漏れ手当てはいろんな方法がありますがどの方法にせよ交換以外は対処療法になり根本治療にはなりませんしそれなりの費用がかかりますので、まずは応急手当をしてオーナーさんの予算確保を待つという選択をしました。

粘土みたいに指でこねて擦り付けるタイプの耐熱樹脂です。

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とりあえずという修理です  (^^ゞ

とりあえず一度お車をお返ししてその後の相談をさせてもらいました。

あとはヘッドライトのくもりも気になったのでちょっとだけきれいにしておきました。

どんな商品でもそうですが経年劣化による不具合は避けて通れませんので、いつかは誰かがその部分を手入れしないといけません。
中古車などで購入した場合その順番がどなたに来るかはもうくじ引きみたいなもんですね。
ただ順番が来たことにくじけず愛情をかけてあげると車は調子よくオーナーさんに寄り添ってくれるんです。
相思相愛が長く付き合える秘訣です!

 

 

オートバックス 脱輪等防止策ってなに?

某オートバックスにて車検を受けたユーザーさんが突然のパンクでご入庫。
車検作業は令和5年7月ですからまあ半年ちょっと前。
納品書見せてくれたので参考させてもらいました。

過去にこのブログでハブクリアなるものをしてないのに価格に入ってとの記事を書きましたが今回もそれがどうなってるか興味津々(笑)

タイヤ交換でホイルを外してみたら今回はそれらしき「油」を塗ってあって
「おお今回はちゃんとしてるやん」と。

でもハブの中心は錆びてますけどどうなんでしょう。
自分の整備基準ではブレーキローターとハブ中心部分との固着を避けたいのでできればハブとローターの隙間にも塗ってほしかった。

そして納品書見るとハブクリアという記述はないものの
車軸面防錆処理工賃
という商品名になってました。
改名したのかハブクリアという名称は商品名で実際の納品書としてはこういう記述なのかな?

それはさておきその後ろの

脱輪等防止策

って言うのが今回気になりました。。。

これってなんでしょうか???
油を塗ることで錆ができずにその結果脱輪防止という意味なんでしょうか?
それとも何かプラスでナットを締めるときに特別な加工があるのかな(笑)
オーナーさんに口頭で商品説明でもしてるんでしょうか?
今回のオーナーさんは車検時にタイヤローテーションしてくれてる事実は知らず、ハブに油を塗る意味も「さて?」という反応でお金を払ってました。

実はこのお車、ホイル外すときナットが堅く締まりすぎててインパクトレンチを通常の4~5倍の時間かけてやっと緩むという状態。
まさかきつく締めるのが脱輪等防止策なのかな・・・なんて思いました。
本来は規定トルクで締めることが脱輪等防止策だと思います。
大型トラックのタイヤ脱輪の原因は締め方が足りなくて緩むよりは締めすぎてボルトが延びてヒビが入ってそこから破断、というケースの方が多いとか。

自動車整備士というもの、働く工場の環境や経営方針によっては仕事を急がされてついつい丁寧な仕事が出来ずにバババってインパクトレンチできつく締めてはい終わり、となる気持ちもわからんではないです。
ただでさえ人手不足なのに大きな看板をしょってる会社は従業員を守るため一件でも仕事を取ろうとします。
丁寧な仕事をしたいのに現実には無理、と嘆いてる現役の大手新車ディーラー整備士の話も聞きます。
会社は新商品や整備メニューを作って売って入庫させ、それを処理する現場ではついつい急ぎの仕事になる。

そのあたりは自分みたいに自営してて作業のクオリティに責任及び自己満足が重なる立場の人と、雇われて作業する人の間には埋めがたい溝があるのも事実ですね。
会社全体で顧客の方を向いてモチベーションを共有できる工場なら最高なんですけどね~

単なるパンクでタイヤ交換というだけの作業でしたが、最後まで気になるんですが

脱輪等防止策

ってなに・・・・??

スペーシアMK53S ハスラーMR52Sなど ダブルテンショナーISGベルト交換方法

スズキのマイルドハイブリッド車でスペーシアのMK53S型とかハスラー(MR52S型とかMR92S型とか)はベルトテンショナーを2個使ったタイプがあります。
そのタイプのベルト交換は既存の工具を駆使してもなんとか作業できますがKTCの工具を揃えておくと時短になります。

基本的な構造はこんな感じ(KTCの工具の説明書から借りました)
アッパーとロアーのテンショナーをピンで固定してベルトを外すという単純な事なんですが、とにかくエンジンとメンバーの間が狭いのでそのスペースに対応できる工具を持ってるかどうかが肝心です。

実際の作業ですがこのISGのベルトを外す前にコンプレッサーベルトを外さないといけません。
外すにはストレッチベルト脱着ツールを使うか切断ですね。
うちでは汎用の脱着ツールで外してます。(取付はまたちがうSSTで)

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コンプレッサーベルトが外れたらいよいよテンショナーのロックですね。

固定ピンだけでも売ってますね

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下のテンショナーを動かしてピンを刺す

上側も同様にテンショナーを動かしてピンでロック

2個のテンショナーをロックさえできればISGベルトはいとも簡単に外せます。

取付はベルトをセットしてテンショナーを固定したピンを外せば完了。

 

スズキのマイルドハイブリッド車はISGでエンジンを補助するのでベルトの負担がかなりきついみたいでだいたい4万㎞超えるとほぼひび割れしてます。
うちのお店の交換目安はそのベルトの使用が4万㎞超えたら、ですね。
距離を乗らない方でチョイノリ多い方は5年超えたら要確認です。

左が新品 右が外したベルト

ISGベルトが終わったらエアコンベルトの取付。
これも隙間が無いので工具を選びます。
スズキの純正工具を使ってます。

KOTO製の工具を使ってる方も居られます。(ナリタオートさん出典)

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専用工具は揃えることが可能であれば揃えた方が良い仕事が出来るという方針です。
切れない刃物は余計な力が要るけど手入れされた刃物は力も要らずにきれいに切れ良い仕事が出来る、と先人に教えてもらったからです。
もちろん工夫して一から工具を作ったり既存の工具を知恵と工夫で使いこなしてる達人も居られますが、自分はそういう奇抜な発想力が無いのを自覚してますので工具買います・・・・・・。

2024年3月 整備のまとめ レジェンドハイブリッド車検など

おかげさんで2月の半ばから3月まで入庫が続いてまして一つ一つの事案で記事をアップすれば良いものを気づくと3月10日に近いという・・・
なので気づいた事案などをまとめてみました。

ダイハツムーヴ LA100S  走行38000㎞
信号待ち中にエンジンのどこかの気筒が失火してエンジンが触れ出した、ダイハツはイグニッションコイルが弱いから壊れたかも、とご入庫。

症状の説明が具体的なのはうちの元の従業員さんだから。
現在は引退されて日々の生活を楽しんで居られます。
整備士が症状説明してくれるのだから当たり前ですがわかりやすい。
イグニッションコイルアナライザーでいろいろ比較。
結論から言うと「デンソー製のプラグが原因」でしょうね。
コイルの出力やその他プラグ本体の焼け状態見ても違和感はない。
けれど見当付けてNGK社製のRXプラグに交換したら加速が入庫時と全然違うなめらかさ。
ダイハツ+デンソープラグの組み合わせ不具合を久しぶりに体験。

日産モコ(スズキのMRワゴン)車検でご入庫。
走行距離が少ないお車ですが青空駐車の影響もあってブレーキローターに錆が侵入。
パッドとローターの接触面積が減ってるとどうしても自分の物さしではNG。
許せないのでここらで一度手入れしておきますとご提案。

ローターをきれいに。

そして変な減り方になってたパッドもきれいに。

ホンダレジェンドハイブリッド KC2。
お客さんはなじみのお客さんですがこのお車の入庫は初めて。
正直見たことも乗ったこともなかったので構造を一から事前に予習。
勉強すればするほど、「よくぞこれほど駆動力を制御をしてる車を世に送り出したもんだ」と。
前側のタイヤをエンジン+モーター1個、後ろのタイヤを2個のモーターで駆動。
すごいことしてるな~、と思う半面この車を整備するのかとドキドキ(笑)

仕組みはすごいとは言え消耗品は基本的なものであることに間違いは無いのでその辺りは粛々とメンテナンスさせていただきました。
トヨタ系のディーラー中古車で2年前に車検を受けて購入されたようなのですが・・・
記録上ブレーキフルード交換となっていますがこれって2年前に交換したブレーキフルードですか???

途中まで減らしてみたけれどタンクの底が見えません。
う~ん・・・・ほんまに交換した??

減らした上で新しいフルードをちょっと足してみたらかろうじて底が見える程度。

なんだかな~と悶々としながらブレーキフルードの交換。
さすがにハイブリッド車なので普通の交換手順ではなかった。
トヨタ系のハイブリッド車みたいに診断機を繋いで・・ではなく、

レジェンドハイブリッドのブレーキフルードの交換方法は

  1. アシスタントを乗せてペダルを踏んでもらう
    キーをオンにして4輪交換
    右前⇒左前⇒左後⇒右後 つまりは反時計回りに4輪。
  2. そしてキーをオフにして3分以上待って4輪交換
    これまた反時計回りに右前⇒左前⇒左後⇒右後と一周

※交換途中は乗ったままでドアを開けてはいけない

と通常の倍の手間と人員を使っての作業が必要と整備要領書を読み込んで作業。
予習のおかげ(得意満面)でなんとかクリア。

ブレーキフルード交換が終わってエンジンオイル+オイルフィルターの交換、とコマを進めるとここでも新たなトラップ。
オイルフィルターを強く締めすぎていて既存の工具では歯が立たない。
トヨタ整備士はまたやっちまったな(笑)

しばし方法を考えて工場の中をうろうろ。
そしたら古い工具のエリアに昭和時代のフィルター外しの工具が。
錆が回ってますが、「先代の父上ありがとう」、といそいそ使わせていただきました。
おかげで堅いフィルターに打ち勝つことができました。

新しいフィルターは決められた締付トルクで取付。
どこかの誰かが困らないように。

戦いの跡

レジェンドのオーナーさんが「ブレーキの効きのムラがあるように思う」とおっしゃるのでブレーキローターの振れを測定しようとダイヤルゲージを持ち出して測定。
あらためて文字盤を見るとなんとCITIZEN製。
JISマークも入ってますから正規品です。

あの時計のCITIZEN。
時計の技術を応用して精密機械を作っていたんですね。

実はこっそりとYoutubeチャンネルを持ってるのでよかったらチャンネル登録してください。
ほんとに時々ですが動画をアップしています。

そしてなんとレジェンドはホイルを取り付けてるナットの頭は22㎜。
(通常このサイズの国産車は21mm)
こんなサイズのナットを見たのは初めて。
こんなところがホンダらしいけど整備する側からするとちょっと焦る。

ちなみに締付トルクは127Nm。
この値も初めてでした。

あとはハイブリッド車の電動コンプレッサー対応のカーエアコンサービスステーションデュアルでガスを規定量にきっちりと。
POEタイプのコンプレッサーオイル対応のマシンでないと故障の原因に。

さて、次は・・・
時々水温が上がり気味のワゴンR MC22S 平成15年式の16万㎞。
たぶん今まで一度もサーモスタットは変えてなさそうなので交換。
取り付ける前に新品と比較。
同じ温度で開くスピードと開く量が明らかに違ったのでこれは経年劣化でしょう。
左が新品で真鍮の部分の移動量が違うのがわかります。
移動量=弁の開度ですからこれでよくエンジンは冷えるようになるはず。

サーモスタットと同時にラジエーターキャップやら気になる配管あたりを同時交換。
手間は一緒なのでこういうときにちょっと範囲を広げて部品交換しておけばお得ですね。

まあこんな感じで3月はこれから後半戦。
落ち着く日はなさそうな予感・・・・